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市場移転後、新しい「築地」の魅力を発信する!

2019年07月16日 公開

大西裕樹(ビックウエスト社長)

「民間発」で地域を盛り上げる方法とは?

築地といえば全国的にも「市場の街」として知られ、市場移転後の動向については都民以外の関心も高い。そんな中、築地に拠点を構えるイベント会社・ビックウエストは、築地場外市場を活性化させるためのプロジェクトを立ち上げた。自治体発ではなく、「自分たちで勝手に築地を盛り上げようと始めた」というその活動とはどのようなものか。地方創生にも大いに参考になり得るお話をうかがった。(取材・構成=前田はるみ、写真撮影=まるやゆういち)

 

築地のイベント会社が地元愛で勝手に動いた

市場移転に揺れた築地で、移転後の築地場外市場を活性化させるためのプロジェクトを立ち上げた会社がある。築地に拠点を構えるイベント会社、ビックウエストだ。通常、地域活性化事業は、自治体が予算を確保するケースが一般的だが、このプロジェクトは「誰かに頼まれたわけでもなく、自分たちで勝手に築地を盛り上げようと始めた」という点で大変ユニークである。プロジェクトを立ち上げた理由について、同社社長の大西裕樹氏にうかがった。

「僕は築地が好きで、このエリアに会社を移して7年になります。イベント業という職業柄、時には残業や徹夜をすることもあり、そんなときは仕事帰りに若い社員たちと築地で乾杯するのが何よりの楽しみでした。当時、飲食店の店主と話をすると、『市場が移転すれば築地はどうなるかわからない。俺はもういい年だから、店を閉める潮時かもしれない』と漏らす人もいました。僕らが好きで通っていた場所がなくなっていくのは寂しい。築地のイベント会社として何かできることはないかと考え、『TSUKIJI HAKONIWA PROJECT』を立ち上げたのです」

 

「自社発で盛り上げる」ことにこそ意義がある

とはいえ、このプロジェクトにはクライアントが存在するわけではない。受託業務が生業のイベント会社が、「自分たちで勝手に盛り上げる」ことにこだわる理由は何なのだろうか。

「僕が30代前半でこの会社を立ち上げたのは、新しい時代のイベント会社を作りたかったからです。若い力を取り入れるために早くから新卒採用を行ない、彼らが生き生きと働ける会社を目指してきました。
ただ、受注業務に取り組む中で売上げ重視の傾向が強くなっていくと、社員の笑顔は曇っていきます。人々の笑顔を増やす『顔晴(がんば)らせるパートナー』を企業理念に掲げている僕らが、腹の底から笑えないのはおかしいと気づいたのです。『仕事だからやらなきゃいけない』ではなく、自分たちが本当にやりたいことを自社発信しながら、世の中の役に立ちたい。この考えを社員に伝えると、皆、共感してくれました。2018年の年明けから、通常業務と並行してプロジェクトを始めたのです」

 

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著者紹介

大西裕樹(おおにし・ひろき)

株式会社ビックウエスト代表取締役社長

1977年、群馬県生まれ。東京都育ち。学生の頃から自主イベントを立ち上げ、大学卒業後はイベント会社に就職。2010年にビックウエスト設立。2年後には築地エリアに本社を移転し、以来エリア内で3度引っ越しするほど築地が好き。早くから新卒採用を実施し、若い人が活躍できるフラットな組織を目指している。寿退社以外では離職者ゼロが自慢。

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