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「問い」をノートに書き出すことが問題解決の第一歩

2019年08月27日 公開
2023年02月24日 更新

佐々木直彦(メディアフォーラム代表取締役)

思考整理の第1歩は「問い」を書くこと

 では、具体的に何をノートに書けばいいのか。その第1歩は、「問い」を書くことです。

「なぜ上司は自分の提案を却下したのだろう?」「なぜ今日のプレゼンはうまくいかなかったのだろう?」など、気になっていることやモヤモヤしていることについて、「なぜだろう?」と問いを書いてみる。これが思考を整理する出発点です。

 問いを書くと、人間は答えを出したくなります。その衝動に任せて、頭に浮かんだ言葉を思いつくまま書き出してください。ノートの上に可視化された自分の思考を客観的に眺めると、自分が置かれた状況を冷静に掴めるので、それだけでも混乱していた頭がスッキリします。

色々と書き出しても、最終的な結論は出ないこともあります。それでも、「答えに近づくために何をすべきか」という次のアクションは必ず見えてきます。上司に提案を却下された理由はわからなくても、「上司のことをよく知る先輩のAさんに、相手が何にこだわる人なのか聞いてみよう」といった次の行動は思いつくはずです。あるいは書き出すうちに、「自分の説明不足だったかも」といった反省点が見えてくることもあるでしょう。だったら、「提案の根拠がもっとわかりやすく伝わる方法を工夫してみよう」といった次の行動を取ることができます。

次の行動が起こせれば、人間は前に進めます。大事なのは、頭の中だけでモヤモヤ考えて、思考停止に陥らないことです。

 

◯や矢印を使うだけで簡単に関係性が見える

言葉で書き出した思考をさらに発展させるには、絵を描いて考える方法がお勧めです。

絵といっても難しく考える必要はありません。例えば言葉を円で囲ったり、矢印でつないだりするのも、立派な「絵」です。

二つの言葉を「◯」で囲んで横に並べればフラットな関係を表現できますし、上下に並べれば上司・部下の関係や組織の意思決定の流れを表現できます。どちらかの「◯」から「→」を出せば、一方がもう一方に影響を及ぼすことを意味し、二つの「◯」が「←→」を結べば、互いに影響し合っているか対立していることを表せます。

こうして絵を描くだけで言葉の意味やお互いの関係がクリアになり、思考を整理しやすくなるのはもちろん、イメージを膨らませたり、ユニークなコンセプトを発見したりといった発想の広がりも生まれます。

一例として、私が「手書きの良さ」について取材を受けたとき、どのように思考を展開したかご紹介しましょう。

まずはノートに「なぜ手書きが良いのか?」と問いを書き、思いつくまま答えを書き出します。「すぐ書ける」「絵になる」「自分が面白い」など、箇条書きで九項目を書き出せましたが、さすがにこれだけ多いと思考が拡散してしまい、これという結論が見えてきません。

そこで、この中から「柱」となるキーワードを一つ選ぶことにします。私が柱を見つけるときは、「最も重要だと直感したもの」や「説明しやすいもの」を選ぶことにしています。このときは「自由」に着目し、ノートの次のページを開いて、この言葉を真ん中に置いて太い線の「◯」で囲みました。そして、残り八つの言葉を「自由」の周辺に置き、それぞれを矢印と点線で結んで関連性を整理します。

こうして「なぜ手書きが良いのか?」の問いに対し、「自由だから」という答えに到達できました。ここから「手書きは自由である」という明快なコンセプトを見出すことができ、さらに残り八つのキーワードとの関連性もわかりやすく伝えることができました。これが箇条書きのままだったら、「手書きの良さは、すぐ書けるし、絵になるし、それから自由だし……」と、ただ思いつきの言葉を並べるだけで、相手に要点は伝わらなかったでしょう。絵を描いて考えると、非常に納得感のあるロジカルなストーリーを作れるのです。

 

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著者紹介

佐々木直彦(ささき・なおひこ)

メディアフォーラム代表取締役

1958年、秋田県生まれ。一橋大学社会学部卒。リクルート、産業能率大学研究員を経て起業。独自の問題解決術・コミュニケーション技術を駆使し、多くの企業で変革と創造を実現。また、多数のビジネスプロデューサーを育成するなど、ビジネスパーソンの新しいチャレンジを支援。2010年より、デジタルハリウッド大学大学院客員教授。著書に,
『考えるノート』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。

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