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売上と利益だけではわからない?誰もが見逃しがちな「決算書分析」の要点とは

2019年06月29日 公開
2022年05月25日 更新

石島洋一(公認会計士)

よい会社の条件は「少ない投資で多くの利益」

6月は株主総会シーズン。企業の「決算」に注目が集まる時期だ。だが、そもそも決算書のどこをどう見ればその企業の状況を正しく判断することができるのか、正しく理解している人はそれほど多くはないだろう。

経理の本としては異例のシリーズ60万部を発刊した『決算書がおもしろいほどわかる本』の著者として知られ、近著『ざっくりわかる「決算書」分析』にて決算書分析のイロハを解説した公認会計士の石島洋一氏に、決算書分析の「要点」について教わった。

 

「よい会社」の条件は利益率か? 利益額か?

以下のような2つの会社があったとします。

A社 売上高200億 売上原価100億 諸経費80億 純利益20億

B社 売上高400億 売上原価250億 諸経費120億 純利益30億

A社の売上高は200億円、B社は倍の400億円です。一方、純利益はA社20億円、B社30億円です。

では、A社とB社ではどちらがよい会社でしょうか。

自分なりに答えを出してから、読み進めてください。

 

売上高利益率は経営分析の重要な指標だが

利益と売上高を比較した数値を「売上高利益率」と呼び、利益÷売上高で算出できます。

ここで売上高利益率を見てみると、A社は売上200億円に対し純利益が20億円ですから10%、これに対して、B社のほうは売上400億円に対し30億円の純利益ですから、7.5%です。

売上に対する利益率を考えたら、A社のほうがよいという結論になります。

しかし、別の見方もあります。

最終の純利益で見ると、B社の30億円がA社の20億円を上回っています。この点だけを見てB社のほうがよいとする意見は、単純ですが十分な説得力もあります。

この問題だけで見るなら、私は後者に賛成したいくらいです。

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