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ブレグジットの次のシナリオは、「日英同盟」の復活!?

2019年07月01日 公開
2023年09月27日 更新

茂木誠(駿台予備学校世界史科講師)

EU離脱を目前に控え揺れるイギリス

 では、独自のスタンスを維持してきたイギリスが、なぜEUを離脱する必要があるのか。

 それは、当時のキャメロン政権に対して、ドイツがEUへの予算増とシリア難民の受け入れを要求してきたからです。

 当初、キャメロン前首相は、国民投票の結果をドイツとの交渉の道具にするつもりでした。

「離脱派は4割くらい」と高をくくっていたのです。しかし、蓋を開けてみれば離脱派が過半数に達していた。

 一時期は、EUに代わる巨大市場として中国に期待を寄せましたが、悪化する米中関係を考えると、中国に肩入れしてアメリカに睨にらまれたくない。イギリスは、進退窮きわまってしまったのです。

 イギリスが生き残る道があるとすれば、日本主導のTPPへ加盟し、環太平洋地域に市場を求めること。南太平洋にピトケアン諸島という海外領土を持つ同国は、TPP加盟が可能です。

 また、中国封じ込めを目的とした日・米・豪・印の軍事協力体制にイギリスが加われば、太平洋版のNATOになる。すでにイギリス軍と自衛隊の共同訓練も始まっています。日本にとっても、米国以外のパートナーを得ることは、望ましいのです。

 

写真:昨年9月、イギリスと日本は共同訓練を実施。安倍首相は、ブレクジット後のイギリスが、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に加盟することを歓迎している。国論を二分し、先行き不透明のブレクジットに光明は差すのか。出典:自衛艦隊ホームページ

2019年3月号より

 

著者紹介

茂木誠(もぎ・まこと)

世界史講師

東京都出身。駿台予備学校、ネット配信のN予備校にて、東大・一橋大など国公立志望者向けの世界史講座を担当する。歴史上の人物が憑依したかのようなドラマチックな講義スタイルで、学生からの支持も厚い。各種受験参考書に加え、『ジオ・ヒストリア』(笠間書院)、『「日本人とは何か」がわかる日本思想史マトリックス』(PHP研究所)など著書多数。近年はYouTube「もぎせかチャンネル」にも注力する。

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