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田原総一朗が語る 平成の「ターニング・ポイント」

2019年07月04日 公開
2022年10月06日 更新

田原総一朗(ジャーナリスト)

グローバリズムに逆行し断絶する世界

 ますますグローバル化し、技術が進歩するビジネスと逆行するように、世界は断絶が進む。

「あらゆる規制をなくし、人・モノ・カネが国境を越えて、世界市場で活動する。世界が活性化すると思われたグローバリズムに矛盾が出てきた。

 アメリカでは、多くの企業が工場を人件費の安い国へ移し、かつて栄えていたデトロイトは廃墟となった。職を奪われた白人労働者たちは、アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領を支持し始めた。

 自国第一主義は、アメリカに留まらない。イギリスはEUから離脱した。また、移民問題を背景に、ヨーロッパ各国で極右勢力が躍進を続けている。フランスやオランダでもポピュリズムの嵐が吹き荒れている」

 世界情勢が激変する中、日本は比較的安定している。とはいえ、解決すべき問題は山積みだ。

「平成が積み残し、令和に引き継がれる問題として、次の三つが重要だと僕は思う。

 一つは、日米地位協定。アメリカの占領政策の延長にある日米地位協定を見直さない限り、沖縄の基地移設を始めとした諸々の問題の解決は難しいだろう。

 二つ目は、北方領土問題。日米地位協定とも関連してくるが、ロシアが北方領土を返還することになっても、米軍が駐留することになる。それを、ロシアは良しとしない。つまり、日米地位協定を見直さない限り、北方領土の返還も実現できないのだ。

 三つ目は憲法改正問題。改正ばかりが先行して、憲法がどうあるべきか、どこを変えるべきかといった議論が避けられている。自民党内部には安倍首相のイエスマンしかいないのも問題だ。これでは、国民は憲法改正の問題点を理解しようがない。

 誰もが本質的な議論を避けている。そうした中で、僕は令和でもタブーを恐れずに、『おかしいことは、おかしい』と声をあげ、世に問い続けたい」

著者紹介

田原総一朗(たはら・そういちろう)

ジャーナリスト

1934年滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経て、フリージャーナリストとして独立。『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』(テレビ朝日系列)では、生放送中に出演者に激しく迫るスタイルを確立し、報道番組のスタイルを大きく変えた。活字方面での活動も旺盛で、共著も含めれば著作は100点を超える。現在もテレビ、ラジオのレギュラー、雑誌の連載を多数抱える、日本でもっとも多忙なジャーナリスト。
おもな著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ』『Twitterの神々』(以上、講談社)、『原子力戦争』(ちくま文庫)、『なぜ日本は「大東亜戦争」を戦ったのか』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』(以上、PHP研究所)ほか多数。

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