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togo「街の飲食店を社食に。『green』が実現する新しい福利厚生」

2019年08月07日 公開
2022年10月25日 更新

【経営トップに聞く】田中勇樹(togo社長)

 

コミュニケーションの場としてのランチの重要性に気づいた

田中勇樹

 

 ――現在のところ、サービスを利用できるエリアは、渋谷、恵比寿、六本木、新宿が中心です。

田中 渋谷で起業したので、加盟店は特に渋谷に集中しています。4人の従業員で、飛び込みも含めた営業活動をして、開拓してきました。当社は営業が得意なんです。

 今は6人に増えていて、年末までには20人くらいまで増やす予定です。

 ――加盟店の開拓は、当初からうまくいきましたか?

田中 加盟店数が渋谷で100店舗になるまでサービスをローンチしないと決めていたのですが、それまでに1年かかりました。10回くらい、やめようと思いましたね。

 ――それほど難しかった?

田中 「来るかもわからないお客様のために、なんでオリジナルメニューを作らなければならないのか」「管理画面を見るのが面倒」といった店舗が多くて、ものすごく苦戦しました。

 流れが変わったのは、営業を始めて7~8カ月経った頃、〔株〕ねぎしフードサービスに興味を持っていただき、法人として初めて加盟していただいてからです。『宇田川カフェ』や『桜丘カフェ』などを運営している〔株〕エル・ディー・アンド・ケイにも、渋谷を盛り上げようということで加盟していただき、『権八』などを運営している上場企業の〔株〕グローバルダイニングにも加盟していただきました。そうして徐々にブランド力がついていき、話を聞いてくれるお店が増えていきました。

 ――ちなみ、渋谷で起業した理由は?

田中 インターネットの世界で成長した、福利厚生に熱心な企業が多いからです。

 ――企業側の反応はどうだったのでしょう?

田中 企業については、加盟店が100店舗になってから、本気で営業を始めました。

 最初に導入していただいたのは、新興の大手IT企業でした。その企業は、かなりのお金をかけて立派な社員食堂を作っていたのですが、すぐに従業員に飽きられてしまい、カフェスペースになってしまっていて、そこでお昼にお弁当を販売していたんです。3,000人の従業員がいるのですが、ビルの管理会社から800食までしかお弁当を持ちこんではいけないと言われていたため、取り合いになっていました。そこで、greenを導入していただきました。

 それ以降、数多くの企業からお声がけをいただいています。今は、当社のリソースが足りなくて、お待ちいただいてしまっている状況です。

 導入企業から他社に転職した方に、転職先でgreenの導入を提案していただくケースもあります。

 ――アプリの開発は自社でしているのでしょうか?

田中 はい。もともと楽天〔株〕や〔株〕ディー・エヌ・エーで働いていたエンジニアにCTOとして入社してもらっています。

 ――そもそも、どういう経緯でこのビジネスを考えたのですか?

田中 私の出身地である福岡で有名な飲食店を経営されている方と父が20年来の仲で、サッカー部で食べ盛りだった高校生の私は、その方のお店で、500円で松坂牛の食べ放題をさせていただいたりしていました。皆からも好かれている方で、私はその方に憧れて、飲食店のオーナーになりたいと思うようになりました。

 大学3年生のとき、就職活動を始めたものの、「起業したいのに、なんで就職しようとしてるんだろう」と思って、幼馴染と先輩の3人で居酒屋を始めました。1年間で7店舗まで拡大し、友達もどんどん雇ったりしていたのですが、急に風向きが変わって給料も払えなくなり、6店舗を売却し、事実上、解散のような形で辞めることになってしまいました。

 その後、6人の社長が学生を口説くイベントに参加する機会がありました。行ってみると、社長たちが熱心に話しているんです。起業したいという気持ちはまだありましたから、「このイベントの運営会社に就職すれば、いろんな社長と仲良くなれるな」と思い、その企業に入社することにしました。そこでBtoBの営業を学ばせていただきました。

 その会社には300人くらいの営業職がいて、10くらいの別々の事業に分かれていました。皆、自分の仕事に追われていて、別の事業の営業職と話をする暇もなかったのですが、唯一、休憩スペースでお弁当を食べる時間だけはあって、それが、部署間のアポの共有や連携など、貴重なコミュニケーションの場になっていました。働く時間の中での食の重要性に気づいたのは、それがきっかけです。

 また私は、元サッカー部ということもあって、健康に気を使っていたのですが、コンビニでサラダチキンとサラダを買ったり、外食でサラダをつけたりすると、結構な金額になってしまう。それを毎日続けるのは難しい。「食費補助があればいいのにな」とも思っていました。

 この二つの点から発想したのが、greenです。

 当時のお客様の中には食費補助がある企業もあったのですが、聞くと、領収書の精算が大変だということでした。そこで、greenでは、領収書が必要ない仕組みにしています。

 ――田中社長は、greenの効果として、従業員間のコミュニケーションを円滑にすることを挙げていますね。

田中 greenは、結局のところ、コミュニケーションツールだと思っていただければいいと思います。企業によっては、「2人以上で行く」「転職者と1カ月以内に一緒に行く」など、greenの使い方にルールを設けているところもあります。

 導入企業にアンケートを取っているのですが、「先輩が後輩におごりやすくなった」「インターン生が先輩を誘いやすくなった」といった声もいただいています。

 ――先ほど、学生時代に居酒屋の経営に失敗されたという話がありました。原因はなんだったのでしょう?

田中 渋谷の家賃の高い物件を借りたりして、それに見合う売上げが上がらなくなったんです。単価の高いお客様に来ていただきたいので、昼間は、「部署の飲み会に使いませんか」などと、企業に営業をしていました。そのとき、「近隣の企業の従業員のデータがあれば」と思っていました。greenでお客様のデータが取れるようにしたのは、そのときの経験があったからです。

 

著者紹介

田中勇樹(たなか・ゆうき)

〔株〕togo代表取締役社長

1992年、福岡県生まれ。大学在学中に飲食店を立ち上げ、7店舗まで拡大したが、経営難で手放した経験を持つ。2017年に〔株〕togoを起業。19年2月に社員食堂サービス『green』を開始。

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