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知らないと損をする「教育費」のOK・NG

2019年10月03日 公開
2023年02月24日 更新

前野彩(ファイナンシャルプランナー)

 

老後資金を考慮し教育費に上限を決めよう

 教育費は、いくらでも出したくなるのが親心。「自分も親にそうしてもらったから」と話す親御さんも多くいます。

 しかし、予算に上限を設けることを忘れてはいけません。

 皆さんが子供の頃と今とでは状況が違います。

 今は結婚や出産の平均年齢が上がり、親が定年を迎えても子供が学齢にある家庭も珍しくありません。退職金の平均額も2,000万円を切っており、子供にお金をかけすぎると、親の老後資金がなくなる恐れがあります。

 老後資金が足りなくなると、結局、頼る先は子供になってしまいます。すると子供は、教育費をかけてもらった以上の負担を、10年後、20年後に背負ってしまう可能性も。

 私のもとを訪れる相談者の中にも、高齢になった親の家計の援助に追われ、結婚もままならないと悩むお子さんがいらっしゃいます。

 老後資金に支障をきたすほどの費用を教育に回してしまわないよう、両方同時に考えておきましょう。

 

見直すべきポイントは固定費とイベント支出

 老後資金を貯めながら、教育費も出し惜しみしたくないという人は、家計の固定費を重点的に見直してください。

 食費やお小遣いなどの節約は、手をつけやすいのですが、毎日意識しなければならず、ストレスになりがちです。それに対して固定費は、手続きに知識や手間がかかるものの、一度行動すればいいだけ。遺族年金や健康保険などの社会保険を活用して民間保険を見直す、格安スマホへ変更する、電力やガスの料金プランを変える、賃貸の住み替えや住宅ローンの借り換えなど、打つ手は色々とあります。

 また、1年間のイベント支出を月ごとに書き出すのも有効です。1月は親戚へのお年玉、4月は歓送迎会、5月はゴールデンウィークと誕生日、8月は旅行……と書き出すと、イレギュラーと思っていた支出が実は定期的なもので、しかも、毎月のように何かしらあると気づけます。これらが年間でどの程度の支出になるかを計算し、節約できるポイントを検討しましょう。

 外食などのちょっとした家族のイベント費用も、回数を減らして1回を豪華にするなど、工夫してみてください。

 

医療費控除をすると保育料が安くなる!?

 人生のお金はつながっています。教育費だけに注目するのではなく、家計全体を視野に入れて、ムダを削ぎ、使いたいところにお金を集中させるメリハリが大切です。

 さらに、税と家計とのつながりを知っておくことも重要です。

 保険の見直しなら保険会社が、住宅ローンの借り換えなら銀行が教えてくれますが、税金の仕組みについては学ぶ機会がなかった人がほとんどでしょう。しかし、実はここに、教育費にも関係するポイントがいくつも隠れているのです。

 例えば、医療費控除。一定額以上の医療費がかかった場合、確定申告をすれば、所得税の一部が還付され、翌年の住民税が減額される仕組みです。手間がかかる割に返ってくる金額が少ないと言う人もいますが、医療費控除を利用すると、保育料が安くなる可能性があります。保育料は住民税で決まるため、医療費控除で住民税が下がり、それにより、保育料の区分が下がれば、保育料が安くなるのです。

 iDeCoや小規模企業共済の掛け金も所得控除の対象になりますから、医療費控除と同じメリットが期待できます。「iDeCo=老後の備え」と単純に捉えるのではなく、税との関係を把握することで、思わぬメリットが得られるのです。

 配偶者控除も同様です。共働きの正社員夫婦は「自分たちには無関係」と思いがちですが、妻の産休や育休により、妻の給与収入が201.6万円未満の場合は、夫の扶養に入ることができます。出産手当金や育児休業給付金が口座に振り込まれると、収入だと思いがちですが、これらは非課税のため、所得にカウントされないのです。

 なお、住民税が安くなる方法として知られているふるさと納税は、保育料には関係しません。しかし、高校の授業料が無償になるかどうかの判定の際は、判断材料になります。住民税をもう少し減らせば無償化の枠内に入るという人の中には、ふるさと納税を活用する人もいます。

 このように、税の仕組みを詳しく知ることで、負担を減らし、使いたいところへ、賢くお金を回していくこともできるのです。

 

《取材・構成:林 加愛》
《『THE21』2019年9月号より》

著者紹介

前野 彩(まえの・あや)

ファイナンシャルプランナー

1974年生まれ。CFP(R)。〔株〕Cras代表取締役、FPオフィスwill代表。元中学校・高校の養護教諭という経歴を活かし、「こころ」と「お金」の両方を大切にしたアドバイスを行なう。年間400件を超える個人相談の他、テレビや新聞、講演などで「楽しくお金を使える知恵」を伝える。最新刊は『本気で家計を変えたいあなたへ〈第3版〉』(日本経済新聞出版社)。

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