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患者数2530万人!?「国民病」となった変形性膝関節症とは

2019年09月16日 公開

桑沢綾乃(埼玉協同病院 整形外科部長)

歩けなくなると他の様々な病気を引き起こすことにも

 

「変形性膝関節症」という言葉には、馴染みがない人が多いだろう。しかし、実はこの病気の患者は日本に2,530万人もいるという(潜在患者を含む)。歳を取ると膝が痛むのは仕方がないと思っている人が多いだろうが、膝の痛みの中で最も多いのが、この変形性膝関節症なのだ。埼玉協同病院で整形外科部長を務める桑沢綾乃氏に、その特徴と治療法を聞いた。

 

痛みを和らげる効果があるのは「痛み止め」と「運動療法」だけ。ただし根本的な解決にはならない

 ――変形性膝関節症の患者は日本に2,530万人もいるということで、非常に多いですね。

桑沢 国民病と言っていいですね。

 ――どのような症状が出るのでしょうか?

桑沢 歩くと膝が痛い、足腰が痛い、というものです。良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いので、初めて痛みを感じてから15年ほど経ってから病院に来られる方も多くいらっしゃいます。

 ――そんなに長く放置してしまうんですか!?

桑沢 徐々に痛くなってくるので、急激に激痛が来ない限りは、「歳なので仕方ない」と、老化の一つとしか捉えていないのでしょう。

 ――老化ではないのですか?

桑沢 半分は老化で、遺伝子の影響もあると言われていますが、環境要因も大きいと思います。

 ――環境要因と言うと?

桑沢 肥満で膝への負担が大きかったり、若い頃にスポーツで怪我をしていたり、といったことです。

 ――どのくらいの年齢で発症する人が多いのでしょうか?

桑沢 膝の痛みを感じ始める年齢の平均は56.4歳だということです。年齢が高いほど膝の軟骨がすり減るので、80歳だと6割くらいの方が変形性膝関節症の診断を受けます。

 ――変形性膝関節症とは、膝の軟骨がすり減ること?

桑沢 はい。膝の軟骨がすり減ると、骨の間に隙間ができます。さらに進行すると、骨同士がくっついてしまう。こうなると車椅子生活の寸前ですが、「家事をしなくてはならないから」などと、ムリをして歩こうとされている方も多いです。

 ――どのようなメカニズムで進むのでしょうか?

桑沢  変形する人の膝では、9割に関節の中に炎症が起きます。炎症があると、さらに軟骨が変性劣化し、雪だるま式に悪化していきます。

 また、筋力が弱ることも、膝の軟骨がすり減る原因です。膝は周りの筋肉に支えられているので、筋力が弱ってくると不安定になります。すると軟骨に負荷がかかり、最も一般的なのは、体重が膝の内側にばかりかかるO脚が悪化して、内側の軟骨がさらにすり減りやすくなります。

 ――治療はどのようにするのですか?

桑沢 症状が軽いうちは、炎症を止める薬を飲んでいただいたり、膝を支える筋肉を鍛えるための筋トレをしていただいたり、肥満の方の場合は体重を減らしていただいたりします。

 日本整形外科学会が出しているガイドラインでは、変形性膝関節症の痛みが改善する可能性があるのは、痛み止めと運動療法(筋トレ)だけなんです。温熱療法やマッサージをする方が多いのですが、それらに効果があるというエビデンスはありません。

 ――筋トレをすることで進行を遅らせることはできても、治すことはできない?

桑沢 軟骨がすり減るスピードを遅くできる可能性はあると思いますが、一度始まったすり減りや炎症は、クルマの塗装が剥げ始めるのと同じで、どんどん進行していきます。ヒアルロン酸を飲んでも、胃でアミノ酸に分解されるだけだとされています。

 ただ、かなり初期に行なえば、それ以上の進行を抑える効果があると期待されている治療法はあって、それが再生医療です。例えばPRP療法では、血小板を使います。血小板には軟骨の健康を守る成長因子(抗炎症性サイトカイン)が含まれていて、膝の中の炎症を改善する可能性があります。

 けれども、再生医療は自費診療なのでお金がかかります。まだ症状をそれほど自覚していない初期の段階で大きなお金をかける方は、少ないのが実際のところでしょう。

 また、再生医療はここ1~2年で登場してきたものなので、我々も長期的なデータを持っていないんですね。効果の程は、まだこれからの研究結果が待たれています。

 ――進行して歩けなくなると、他の病気にもつながりますよね。

桑沢 もちろんです。認知症の進行や、心肺機能の低下の一因となり得ます。

 ――そもそも発症しないように予防することはできるのでしょうか?

桑沢 40歳を過ぎると、自覚はなくても太ももの筋力は落ちていきます。日頃から筋肉を貯筋する運動が最も大切です。

 

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著者紹介

桑沢綾乃(くわさわ・あやの)

埼玉協同病院 整形外科部長/関節治療センター 副センター長

2001年、東京女子医科大学医学部卒。川崎市立川崎病院、東京医療センターを経て、08年から埼玉協同病院勤務。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本人工関節学会評議委員。

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