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退職を後悔しないために「独立前」に必ずやっておくべきこと

2019年10月30日 公開
2023年03月31日 更新

前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

700通の退職の挨拶に「返信ゼロ」の現実

 41歳での独立。その厳しさは想像していたつもりでしたが、実際は想像以上でした。

 700通もの退職の挨拶状を出して、1通も返事が来ませんでした。そのうちの何通かは、何かしらの仕事のオファーが来るものだと踏んでいたのですが。

 顧客候補もなく会社を辞めた私にとっては大ダメージ。正直に言うと、リクルートで実績を挙げ、本も出していた私には、仕事が簡単に来るものだと思っていました。

 実情は誰もが、「前川孝雄ではなく、リクルートの編集長としてつきあっていた」という厳しい現実を突きつけられました。

 実績があっても、セルフブランディングを過信しない。肩書きの威力は予想以上に大きい。これは大きな反省です。

 独立後、本当にやることがありませんでした。FMを聞きながら近所の野良猫にエサをあげる日々。誰からもメールや電話も来ない。社会から断絶された孤独感を味わいました。

 そんな折、仕事で干された私を拾ってくれた元上司から、電話がかかってきました。彼は、人事担当役員になっていて、「今のリクルートの人事制度を変えたいから、手伝ってほしい」というのです。

 思えば、親心だったのでしょう。プロジェクトが成功した後、彼はその実績を積極的にピーアールするよう勧めてくれたのです。

 私は、この経験から「前の職場の人間関係を大切にしなさい」と伝えています。本当に困ったとき、まず手を差し伸べてくれるのは、あなたの働きぶりを知っている元上司や同僚なのです。

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著者紹介

前川孝雄(まえかわ・たかお)

〔株〕FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師

1966 年、兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。〔株〕リクルートで『リクナビ』『就職ジャーナル』などの編集長を務めたのち、2008 年に〔株〕FeelWorks 設立。「上司力研修」「50 代からの働き方研修」などで400 社以上を支援。2017 年に〔株〕働きがい創造研究所設立。〔一社〕企業研究会研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業審査員なども兼職。
独立直後には、「700 通の挨拶状を送るも反応ゼロ」「仕事の依頼がなく近所の公園で途方に暮れる」といった挫折を味わう。そこから立ち直った経験から、近年はミドルの転職・独立・定年後のキャリアの悩み相談に乗る機会も多い。
著書は、『上司の9割は部下の成長に無関心―「人が育つ現場」を取り戻す処方箋』(PHPビジネス新書)、『「働きがいあふれる」 チームのつくり方』(ベスト新書)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう転職はさせない! 一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など多数。

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