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意味のない「クソ仕事」を捨てて ワクワクする時間に集中しよう

2019年11月08日 公開
2023年02月24日 更新

山口 周(独立研究者)

正しく「手抜き」をするマインドを身につけよ

 ただ、技術が進化したのに、労働時間が一向に減らないのはなぜなのだろう。

「イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズは『このまま生産性が上がれば、100年後には1日3時間しか働かない社会がくる』と予言しました。確かに、昔と比べて生産性は上がりましたが、労働時間はあまり変わっていません。価値や意味を生まない、クソ仕事を余計にしているからでしょう」

 クソ仕事はどのようにして減らせばいいのだろうか。

「どこまで手を抜いたら、この仕事はストライクゾーン(許容範囲内)を外れるのか。そのギリギリを攻める。

 例えば、ミーティングは、2~3回行かなければ、自然と呼ばれなくなります。やりすぎると職場にいられなくなるので見極めが必要ですが。

 ちなみに、編集者の箕輪厚介氏と対談した際、彼は『仕事を意識したミーティングはパフォーマンスが落ちる。ワクワクしなければ、ミーティングに行ってはいけない。このままではダメだ!』と言っていました」

 山口氏にとって、会社員時代のクソ仕事は経費精算だった。

「タクシー移動が多かったのですが、私はこの精算が大嫌いでした。手帳と突合せながら、どこで誰と何をしていたのかを記載し、計算するだけで半日はかかります。でも、経理部は予定表と行先の突合せをしておらず、金額と行先だけ確認していた。それなら、走行距離と価格帯を対応したデータベースを作ればいいだけで、突合せする必要はありません。これで、半日の作業を20分に短縮できました。

 クソ仕事は真面目に取り組むものではありません。なのに、日本人は昔から『辛い方がいい』と考えている気がします。

 象徴的なのが、日本で馬車が生まれなかったことです。イノベーションの研究家エベレット・ロジャースは、西洋で馬車が生まれ、自動車へと進化していく中、同時代に日本ではなぜ人が籠を担いで移動していたのか疑問を投げかけています。

 ラクして成果を上げるのは悪ではない。そう考えれば、イノベーションも生まれ、労働生産性も向上するはずです。 

 成長につながらない仕事をどれだけ嫌がるか。それをどうなくすのか。今後の働き方に、この視点は欠かせないでしょう」

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著者紹介

山口 周(やまぐち・しゅう)

独立研究者

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー・ヘイグループ参画を経て独立。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(光文社新書)『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)などベストセラー多数。

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