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「研修中」の名札でお客さまにエクスキューズしている会社は、沈む

2019年11月05日 公開
2023年02月24日 更新

小宮一慶(経営コンサルタント)

小宮一慶

例えば、就職したいと考えている会社が、将来性がある良い会社なのか。取引先の会社は、これから成長が期待できるのか。いまはネットで調べれば、簡単になんらかの情報を得ることができるが、それは「誰か」の知見やものの見方だ。それを参考にしながらも、自分自身で実際にその会社のよしあしを見抜く”確かな目”を養っていくことが大事だと、経営コンサルタントの小宮一慶氏は言う。具体的には、どこをどう見ればいいのか。一例を教えてもらった。

※本稿は、小宮一慶著『伸びる会社、沈む会社の見分け方』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

 

「新人」「研修中」の名札をつけさせている会社はお客さま第一ではない

コンビニやスーパー、レストランなどで、「新人」「見習い中」「研修中」などの名札をつけた人が接客対応をしていることがよくあります。

こうした名札をつけさせている企業は、お客さまのことをきちんと考えていないと私は見ています。

「まだ研修期間中なので十分なサービスができません。その分、お値引きさせていただきます」というなら分かります。しかし、そういうことはあった試しがありません。

まだきちんとした応対ができない人を接客の現場に立たせて平気な会社は、プロ意識が欠けています。「新人のため、不慣れなところや失礼なことがあっても、大目に見てほしい」と自分たちの事情をお客さまに押しつけているだけ。自社都合第一、つまり「自社ファースト」の姿勢です。

できるように教育してから接遇させるというのが本来のあり方です。最近は教育の徹底ができない、余裕のない会社が増えていますが、そういう会社はいずれ沈んでいきます。

プロ野球のルーキー投手が「新人で緊張しているので、デッドボールが多くても許してください」と言ったら、認めてもらえるでしょうか。「すっぽ抜けて立て続けにホームランを打たれてしまいましたが、新人だから大目に見てもらえませんか」ということがあり得ますか。新人であろうと、プロの選手として登録されてマウンドに上がった以上、そんなことは許されません。

スーパーのレジ打ちの仕事でも、レストランのウエイター、ウエイトレスの仕事でも、基本的には同じです。接客の場には一人前のプロとして立つべきなのです。

あるところでこの話をしたところ、「小宮さん、そうおっしゃいますけど、会社側もそれなりに考えているんです。新人だとすぐ分かる名札をつけているのには、他のスタッフに『何かあったときにすぐにカバーに入るように』ということを伝える意味があるんですよ」と言う方がいました。

私は「それなら、お客さんには分からないようなマークをつけたらどうですか?」と言いました。バッジやリボンの色を変えるとか、働いている人たちの間だけに分かるような目印をつければいいだけのことです。

例えば、JR西日本では、新幹線の中のワゴン販売のパーサーがベテランかベテランでないかは、スカーフで分かるようになっています。東海道新幹線のパーサーは、バッジの色で職制が分かります。私のような鉄道マニアは関心があるので知っていますが、一般のお客さまは知らないでしょうし、知る必要のないことです。

 

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著者紹介

小宮一慶(こみや・かずよし)

経営コンサルタント、小宮コンサルタンツ代表

1957年、大阪府生まれ。1981年、京都大学法学部を卒業後、東京銀行に入行。1986年、米国ダートマス大学経営大学院でMBAを取得。帰国後、経営戦略情報システム、M&A業務や国際コンサルティングを手がける。1993年には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1996年、〔株〕小宮コンサルタンツを設立。『小宮一慶の1分で読む!「 日経新聞」最大活用術』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。

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