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「成人式の悲劇」をなくした振袖レンタル会社がやったこと

2019年11月26日 公開
2023年02月24日 更新

小宮一慶(経営コンサルタント)

 

伸びる会社の会議では何を話し合っているのか

 実は、同業他社との差別化というのは、この会社の得意とするところだったのです。

 そこまで成長できたきっかけは「写真」でした。

 成人式で晴れ着を着たら、みんな写真を撮りたくなります。しかし、今から20~30年前ごろは、記念写真というと街の写真館に行ってグレーのバックで撮るしかありませんでした。

 この会社では、お店に写真スタジオを設え、若い女性に人気の女性雑誌のモデルさんのような感じで何ポーズもかわいらしい写真を撮り、そのフォトブックを作るサービスを始めたのです。

 これが当たりました。ご本人も大喜びですし、ご両親も喜んでくださったのです。成人式の晴れ着代を出してくれるのは親御さんですから、大正解です。

 カタログやネット広告には10代の女の子たちに人気のあるタレントやモデルを起用しているので、「あの人が着ていた着物を着たい」「あんなヘアスタイルやメイクにしたい」「同じようなセットで撮ってほしい」という声がたくさんあるそうです。

 いまの若い人たちは、それをどんどんSNSにアップして人に見せます。それも広告宣伝になって広がってくれるわけです。

 晴れ着、成人式の着物の市場は縮小していると言われていますが、この会社は高成長を続けています。市場が縮小している業界でも、他社とどこで違いを出していくかを打ち出せると強いということです。

 成人式の晴れ着に満足していただけると、お客さまは、その後、大学の卒業式、そしてウエディングでも利用したいと考えます。リピーターになっていただくことができるのです。そこも大きな強みです。

 ちなみに、この会社には「MIC会議」と呼ばれている会議があります。「マーケティング」「イノベーション」「カット(ムダの)」、この3つに集中した会議をやっているのです。

 伸びる会社は会議も一味違います。

著者紹介

小宮一慶(こみや・かずよし)

経営コンサルタント、小宮コンサルタンツ代表

1957年、大阪府生まれ。1981年、京都大学法学部を卒業後、東京銀行に入行。1986年、米国ダートマス大学経営大学院でMBAを取得。帰国後、経営戦略情報システム、M&A業務や国際コンサルティングを手がける。1993年には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1996年、〔株〕小宮コンサルタンツを設立。『小宮一慶の1分で読む!「 日経新聞」最大活用術』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。

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