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「年収700万円くらいなら...」世間知らずな転職希望の大企業ミドル社員たち

2019年12月04日 公開
2023年09月15日 更新

前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

 

現実的なラインで生活レベルを見直す視点も必要

このような話をするととたんに悲観する人が多いのですが、そもそも年収700万円という数字にもたいした根拠などありません。本当にそのような金額が必要なのかどうかも、よく調べて、検討する必要があります。

先ほど触れたように、日本企業で働く人の4割は年収300万円以下なのです。大企業で働いていた人は「それでは生活できない」と言いますが、実際、それで生活している人はいくらでもいます。自分や家族の生活レベルを見直すという視点もあっていいはずです。

また、夫のみが働く専業主婦世帯は減少し続けており、今や共働きが一般的ですから、多くは夫婦が力を合わせて家計をやりくりしているのです。夫が年収400万円、妻が年収300万円稼げれば、世帯年収は700万円になるというわけです。

自分の市場価値と転職後の生活レベルを客観的に見直すことで、より現実的な希望年収を弾き出すことができます。

希望年収を根拠なく高めに設定することをやめて、最低ラインを下げることで、転職先の選択肢は増え、何より転職後のプレッシャーを軽減できるのですから、決して悪いことばかりではありません。仕事内容重視で、本当にやりたいことができる企業を選べる可能性も高くなるはずです。

また、仕事の内容面に関しても十分なリサーチが必要です。分業化された大企業の仕事に慣れている人が中小企業に転職すると、業務範囲が一気に広がることにきっと戸惑うことになります。

例えば、転職前は経理の、それも一部の業務だけを担当していた人が、中小企業に転職して経理も人事も総務も任されるといったことはざらにあります。

そういう実態を事前に理解できていれば、今の会社の他部門の業務に対する関心の持ち方も変わってくるでしょう。リスクを冒して行動を起こす前に調べられることはいくらでもあるのです。

著者紹介

前川孝雄(まえかわ・たかお)

〔株〕FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師

1966 年、兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。〔株〕リクルートで『リクナビ』『就職ジャーナル』などの編集長を務めたのち、2008 年に〔株〕FeelWorks 設立。「上司力研修」「50 代からの働き方研修」などで400 社以上を支援。2017 年に〔株〕働きがい創造研究所設立。〔一社〕企業研究会研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業審査員なども兼職。
独立直後には、「700 通の挨拶状を送るも反応ゼロ」「仕事の依頼がなく近所の公園で途方に暮れる」といった挫折を味わう。そこから立ち直った経験から、近年はミドルの転職・独立・定年後のキャリアの悩み相談に乗る機会も多い。
著書は、『上司の9割は部下の成長に無関心―「人が育つ現場」を取り戻す処方箋』(PHPビジネス新書)、『「働きがいあふれる」 チームのつくり方』(ベスト新書)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう転職はさせない! 一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など多数。

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