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50歳から今の会社でもう一勝負! キャリアシフトの勧め

2019年12月11日 公開
2024年01月29日 更新

前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

 

多くのミドル・シニアに観てほしい映画『マイ・インターン』

 ここでミドル・シニアにとっての働きがいを考える上で、大いに参考になる映画を紹介しておきましょう。『マイ・インターン』というロバート・デ・ニーロ主演の作品です。

 定年で印刷会社営業の仕事を引退し、妻にも先立たれた70歳のベン・ウィテカー(デ・ニーロ)は映画の冒頭でこう独白します。「貯まったマイルで海外旅行に行っても帰ってくるたびに感じるのは虚しさばかり、太極拳や園芸など、様々な趣味に手を出しても心にポッカリ空いた穴は埋まらない……」と。

 長年の備えで経済的な不安からは解放され、広々とした一軒家に暮らし、たまに孫と過ごすことのみが楽しみな生活。ベンはそんな時間潰しのような自分の余生を分析し、決して不幸ではないはずの今の生活に足りないものは何なのかを考えます。

 そこで、彼は、ファッション通販サイトを運営するITベンチャーのシニア・インターンに応募し、若者たちの間で働き始めるのです。

 基礎的なITリテラシーすらないベンは、最初は当然のように苦労し、アン・ハサウェイ演じる上司の若い女性経営者にも疎まれます。ところが、彼はめげることなく、コツコツと誰もやりたがらない雑用をすることから始めます。そして、年の功を活かし、急成長する中で余裕を失っている若い組織の問題点を見抜いて、子ども以上に年の離れた若い同僚の相談相手になったり、若い上司を精神的にサポートしたりして存在感を強めていきます。なにしろ長年営業として働いてきた経験がありますから、人間観察力や人間関係構築力は、コンピュータオタクの若者の比ではありません。

 こうしてベンは上司にとっても会社にとっても次第になくてはならない存在になっていきます。そしてベン自身も周囲に貢献することに働きがいを感じ、活力を取り戻していくのです。

 2015年公開ですから日本では少し早すぎた作品かもしれませんが、今こそ、中高年の皆さんには観ていただきたい。ミドル・シニアにとっての第二、第三の職業人生の一つのモデルが実に魅力的に描かれています。このストーリーは決して特別な人の特別なエピソードではありません。読者の皆さんにとっても十分あり得る未来なのです。

著者紹介

前川孝雄(まえかわ・たかお)

〔株〕FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師

1966 年、兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。〔株〕リクルートで『リクナビ』『就職ジャーナル』などの編集長を務めたのち、2008 年に〔株〕FeelWorks 設立。「上司力研修」「50 代からの働き方研修」などで400 社以上を支援。2017 年に〔株〕働きがい創造研究所設立。〔一社〕企業研究会研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業審査員なども兼職。
独立直後には、「700 通の挨拶状を送るも反応ゼロ」「仕事の依頼がなく近所の公園で途方に暮れる」といった挫折を味わう。そこから立ち直った経験から、近年はミドルの転職・独立・定年後のキャリアの悩み相談に乗る機会も多い。
著書は、『上司の9割は部下の成長に無関心―「人が育つ現場」を取り戻す処方箋』(PHPビジネス新書)、『「働きがいあふれる」 チームのつくり方』(ベスト新書)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう転職はさせない! 一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など多数。

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