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人生最後の日に後悔しないため、やりたいことを最優先する

2019年12月17日 公開
2023年01月11日 更新

星野佳路(星野リゾート代表)

 

経営判断に必須なのが「7時間の良質な睡眠」

もっとも、ここまで大胆に趣味の時間を入れてしまうと、仕事をする時間は確実に減る。いくら経営者で、時間の融通がききやすいといっても、何もしなければ、仕事のパフォーマンスは下がるだろう。

そこで、少しでもパフォーマンスを高めるために、星野氏が意識しているのは、「睡眠の質を上げること」だという。

「経営者は経営判断をすることが仕事です。そのパフォーマンスに明らかに影響しているのが、『睡眠』です。私の場合、最低7時間は寝ないと、頭が働きません」

星野氏が実践しているのは、ベッドの下に特殊なマットを入れて、睡眠時間と眠りの質を計測することだ。深い眠りと浅い眠りのバイオリズムが測定でき、アプリでその結果を見られるという。

「計測するようになって、改めてわかったのは、長く寝れば良いというものではないこと。7時間寝ていても、浅い眠りばかりだと、翌日パフォーマンスが下がります」

深い眠りを確保するためには、星野氏は毎日、生活リズムを一定にすることを心がけている。

「夜ふかしすると確実に睡眠の質が下がるので、決まった時間に寝るようにしています。寝る前に良いアイデアが思いつくこともありますが、そんなときはスマホのメモに入力して、それ以上考えずに寝てしまいます。

また、私は海外出張が多いので、時差調整が難しいのですが、睡眠薬を使って緻密に調整しています。睡眠の質を確保することに、努力を惜しみません」

また、コレステロール値を下げるために、毎日、1万5000歩歩くことを目標にしているが、睡眠時間を確保するために、できるだけ日中に歩くようにしているという。

「例えば、外出があるとき、歩ける距離の場所だとしたら、喜んで歩いて帰ってきます。夜はノルマに足りないぶんを歩くだけ。そうすれば、毎日同じ時間に寝ることができます」

 

会議は減らし、会食は断る

思考の質を上げても、1日で仕事をこなせる量には限界があるのではないだろうか。

「長時間仕事をしていると、パフォーマンスの質は下がってきます。仕事そのものを減らすという選択も必要です」

年間60日のスキーをするにあたり、星野氏も様々な仕事をするのをやめてきた。その一つが、会議に出ることだ。

「私の発想が期待されている会議なら出ますけど、ただ単に聞いて承認するだけなら参加したくないので、出ません。『あとから、私は聞いていないなんて言わないので、自由にやってください』と伝えています」

また、夜の会食もほとんど行かなくなった。

「お酒を飲むことで睡眠に悪影響を与えますし、何より時間を取られますからね。仕事関係の会いたくもない人と会って、長い時間食事をするのは、ストレスが溜まるだけ。接待はしないし、受けません」

人脈を広げるためには、会食も必要ではないのだろうか?そう聞くと、即座に「会食で作った人脈なんて役に立たない」と答えが返ってきた。

「人脈で儲かったことは一度もありません。接待してもされても『あの方は、つきあいがいい方だ』というだけで、商売の売上げには何も関係しません。何かの交渉にしても、知っている人だから便宜をはかるということも、まったくありません。

むしろ、人脈がなくてもニーズに合うサービスが提供できていれば、お客様から支持される。会食をしている時間があったら、そのサービスの提供にこそ、本当に時間をかけるべきだと思いますね」

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著者紹介

星野佳路(ほしの・よしはる)

星野リゾート代表

1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発(現・JALホテルズ)に入社。シカゴにて2年間、新ホテルの開発業務に携わる。89年に帰国後、家業である㈱星野温泉に副社長として入社するも、6カ月で退職。シティバンクに転職し、リゾート企業の債権回収業務に携わったのち、91年、ふたたび㈱星野温泉(現・星野リゾート)へ入社、代表取締役社長に就任。

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