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「アウェイ」への越境的学習が、個人の名前で生きる力を育てる

2020年01月17日 公開
2023年02月24日 更新

石山恒貴(法政大学大学院政策創造研究科教授)

「居心地の悪い場所」へと一歩踏み出そう!

 

 仕事をひと通り回せるようになると、会社での学びは少なくなる。また、社内だけを見ていると、定年後のキャリアは拓けてこない。そこで必要なのが「越境的学習」だと、キャリア開発などを研究する石山恒貴氏は話す。

 

「キャリアの終わり」は過去の話になった

 40代になると、ビジネスパーソンの動機づけは変化する。人材マネジメントや人材育成を専門とする法政大学大学院教授の石山恒貴氏は、そう指摘する。その理由は、出世への意欲とキャリアへの意識が大きく変化する時期だからだという。

「グラフ1を見ていただければわかる通り、42.5歳を境目として、『出世したい』と『出世したいと思わない』の割合が逆転します。40代中盤になると、同期入社組の間で昇進の格差が大きく広がり、『自分も頑張れば出世できるかもしれない』という期待が薄れるためです。

 すると、多くの人は、『自分のキャリアは先が見えた』と感じるようになります。グラフ2は『キャリアの終わりを意識していない人』と『意識している人』の割合を示したもので、こちらは45.5歳で後者が前者を逆転します。つまり、『出世の道が絶たれたら、自分のキャリアは終わり』と考える人が多いということ。このことが、成長意欲や何かを学ぶ気力に悪影響を与える可能性があります」

 

グラフ1 42.5歳で「出世したいと思わない」人が「出世したい」人より多くなる!

 

グラフ2 45.5歳になると「キャリアの終わり」を意識している人のほうが多くなる!

 

 しかし、こうした考え方は既に過去のものになりつつあると石山氏は話す。

「人生100年時代には、60歳や70歳を超えても働き続ける人の割合がかなり増えるはずです。しかも、その働き方が多様化すると予想されます。『働く=雇用される』と考えがちですが、フリーランスになる、起業する、といった選択肢もあるし、『週に3日は雇用されて働き、残りはフリーランスとして働く』といった複合型も考えられます。一つの会社の中だけで生きることを前提にすると『出世の終わりはキャリアの終わり』と感じてしまいますが、多様な働き方を選べるのだと考えれば、『その準備として、自分は今から何を学ぶべきか』という発想が生まれるはずです」

 

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著者紹介

石山恒貴(いしやま・のぶたか)

法政大学大学院政策創造研究科教授

1964年生まれ。新潟県出身。一橋大学社会学部卒。産業能率大学大学院経営情報学研究科経営情報学専攻修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科政策創造専攻博士後期課程修了。大学卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て現職。「越境的学習」「キャリア開発」「人的資源管理」などが研究領域。著書に『会社人生を後悔しない40代からの仕事術』(パーソル総合研究所との共著/ダイヤモンド社)、『地域とゆるくつながろう!』(編著/静岡新聞社)などがある。

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