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会社員からの起業のリアル。「会社員のうちにできることは、全部しておいたほうがいい」

2020年01月29日 公開
2023年02月24日 更新

田中美怜(AKEBONO TEA社長)

 

売上げを伸ばすには地道な活動の積み重ねが必要

 

 ――そういったことをしながら、販売面の準備も?

田中 ネットショップも準備していました。そのときは、オフラインでの販売は考えていませんでした。実際に商品ができてからでないと、お店に営業をするのも難しいですから。

 ――ネットショップの開設にShopifyを使った理由はなんですか?

田中 まず、海外に日本茶を広げることを目指しているので、多言語・多通貨に対応していること。日本のプラットフォームだと、海外向けのビジネスに弱いところがありました。そして、スモールスタートができることも理由です。

 Shopifyは海外のプラットフォームですが、日本語でも違和感がないデザインになっていますし、既に日本支社があり、日本の税制や配送システムなど、日本に住んでいないとわからないことにも対応しているのもポイントでした。

 ――振り返ってみて、営業開始までで一番大変だったことはなんですか?

田中 ずっとそこで商品を作り続けようと思っていた工場で、作れなくなったことでしょうか。間にOEM業者を挟んでいたのですが、その業者がオーガニックを扱わないことになったんです。

 海外に販売していくためにオーガニックの認証を取りたかったので、「なんとかならないでしょうか」と頼んだのですが断られてしまい、他の工場を探すことになったのですが、そもそもオーガニックに対応している工場は少なくて、小ロットに対応している工場はさらに少ない。そこで救いの手を差し伸べてくれたのが、今の工場です。当社がクラウドファンディングをしているときに、その記事を見て連絡をくれました。

 ――ということは、工場が決まっていない状態でクラウドファンディングをしていた?

田中 元の工場で作れるという前提でクラウドファンディングを始めたのですが、途中でそういう話になってしまったんです。

 ――恐いですね……。商品ができてから、売上げはすぐについてきましたか?

田中 そんなことはないですね(笑)。Twitterでフォロワーが5,000人いるような人ならすぐに売れるかもしれませんが、ネットショップを開設したところですぐに売れるわけではないし、お店に営業をかけてすぐに取り合ってくれるわけでもありません。SEOをしたり、コネを探したり、JETROの企画に応募したりと、地道な活動を重ねました。そうするうちに、メディアに取り上げていただくようにもなりました。

 ――ソフトバンクでは法人営業をされていましたが、その経験は活きましたか?

田中 会社間のやり取りのテンションや、見積書や契約書などがあるということはわかっていましたが、業界が違うので、それほどは……。

 小売店へ卸す前後のやり取りやアフターフォローの仕方、ポップアップストアでの陳列方法、値札の作り方など、小売業の経験者なら当然の知識が私にはありませんでしたから、失敗をしてから「こうすればよかった」と思うことは多いです。

 たまたま大学のゼミのOB会で知り合った方に紹介していただいた方から、業界のことを教えていただいていて、とても勉強になっています。

 

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著者紹介

田中美怜(たなか・みさと)

AKEBONO TEA〔株〕代表取締役社長

1991年、愛知県生まれ。慶應義塾大学在学中にパリ政治学院(フランス)とボッコーニ大学(イタリア)に留学。卒業後はソフトバンク〔株〕で法人営業を経験。2年間勤めたあと退社し、スタートアップで新規事業開発などに携わったのち、2018年にAKEBONO TEA〔株〕を起業。

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