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2017年創業の冷凍パンベンチャーが、なぜネスレ日本と協業できたのか

2020年02月06日 公開

矢野健太(パンフォーユー代表取締役)

焼き立ての美味しさを遠くまで届ける技術を開発

 2020年2月3日、ネスレ日本〔株〕と〔株〕パンフォーユーが協業を発表した。パンフォーユーは、群馬県桐生市に本社を置き、冷凍パンをオフィスに届ける事業を行なっている、2017年に創業したばかりのベンチャー企業だ。なぜ、大企業との協業が実現したのか。代表取締役の矢野健太氏に話を聞いた。

 

ネスカフェアンバサダーでの取り扱いが開始

 ――ネスレ日本との協業の内容を教えてください。

矢野 ネスレ日本がオフィス向けに展開している「ネスカフェアンバサダー」で、当社の冷凍パンも取り扱っていただくというものです。ネスカフェアンバサダーのオンラインストアに掲載していただくとともに、既存のお客様にもご案内をしていただいています。

 オフィスワーカーには朝食を摂っていない方も多いので、そうした方に、コーヒーと一緒にパンも食べていただきたいと思って始めました。

 ――ネスカフェアンバサダーの商品と御社の商品が一緒に届く?

矢野 いえ。当社の商品は、当社から直接お送りします。

 ――朝食にパンを、ということは、朝に届くのですか?

矢野 冷凍していますから、朝に限らず、就業時間帯にお送りします。1度にお送りするのは12個もしくは20個。オフィスにある冷蔵庫の冷凍室は空いていることが多いので、そこに保存していただき、電子レンジで40~50秒、解凍していただくと食べられます。賞味期限は1カ月以上あります。

 パンは冷凍すると美味しくないと言われがちなのですが、それは、焼き立てのパンの美味しさを100点だとすると、パン店で買って持ち帰るだけで70点くらいに落ちてしまううえに、それを冷凍すると60点、50点になってしまうからです。当社が考案した冷凍方法だと、焼き立ての100点の状態で冷凍していることもあり、90~95点の美味しさを保つことができます。


12個セット

 

 ――パン自体ではなく、冷凍方法が特別なのですね。

矢野 そうです。特許申請中の技術です。検査をして、風味が落ちないということが数値でも出ています。

 ――パンは、街のパン店から仕入れているということですが。

矢野 はい。冷凍方法を各パン店にお教えしています。

 現状では25店舗ほどのパン店に作っていただいたパンを群馬県の冷凍倉庫に集めて、それらを詰め合わせて商品にしています。2020年の春~夏には、パン店から直接、お客様へお送りする形に切り替えていきます。

 詰め合わせにしているのは、色々なパンを食べたいというニーズが強いことを感じたからです。

 もともと当社は、小麦粉の種類や中に入れる具を選べる、冷凍パンのオーダーメイドの事業を個人向けに行なっていたのですが、そちらの注文はあまり入らず、冷凍パンのアソートセットの注文ばかり入りました。ユーザーにインタビューをしても、パンの材料を選べるよりも、届いた色々なパンの中から次に食べるものを選べるほうが嬉しいという方が多いことがわかりました。

 個人向けからオフィス向けに転換したのは、冷凍パンを通販で買う習慣があまりないので、ニーズが多いところを探した結果です。転換したのは2018年5月で、同年9月に正式にスタートしました。

 ――オフィスワーカーがパンを食べたければコンビニなどでも買えますが、それでも冷凍パンのニーズが多い?

矢野 冷凍パンというよりも、美味しいパンのニーズが多いんです。ネスレ日本も、これまでずっとパンを提供しようと考えていたけれども、美味しいパンを提供できる企業が見つからなかったので実現できていなかったそうです。そんな中で当社を見つけていただき、2018年12月に声をかけていただきました。当時、当社のサービスの導入先は30~40社しかなかったのですが、そのうちの1社の社長を通じて、ご連絡をいただきました。

 ――御社の冷凍パンの美味しさを高く評価したわけですね。

矢野 メーカーの都合でビジネスをするのではなく、食品を通じて世の中をよくしていき、持続可能なビジネスをしようというネスレ日本の考え方と、地方創生に貢献したいという当社の考え方も合っていました。

 2019年3月に『がっちりマンデー!!』(TBS系)で取り上げていただいてからは他の企業からもお声がけいただいて、国内の飲料メーカーからはほとんどご連絡をいただいたのですが、ネスレ日本からはその前からお話をいただいていたうえに、プロモーションなどにかかる予算も用意していただきました。

 ネスレ日本はこれまでにも「ネスカフェ アンバサダー」向けウォーターサーバーとの一体型マシンの共同開発、軽食の提供など、他社との協業例がありますが、食事(パン)を提供する取り組みは当社が初です。それだけ期待していただいているということだと思います。

 ――協業するにあたって、ネスレ日本から何か要望はありましたか?

矢野 特にありません。あえて言えば、プロモーションやブランディングも一緒にやっていくので、飲料メーカーとの協業としては、最初にリリースさせてほしいということです。ですから、2019年3月以降にご連絡をいただいた飲料各社には、お待ちいただいている状態です。

 ――飲料メーカーがこぞって声をかけたのは、なぜなのでしょうか?

矢野 各社がおっしゃるのは、コンビニコーヒーの影響です。オフィスで美味しいパンが食べられるようになり、コンビニに行かなくて済むようになれば、自社のコーヒーを飲んでいただけるだろう、ということです。

 各社とも、これまでオフィス向けにパンを提供しようと試みたことはあるのだけれども、あまり美味しくなかったために撤退したという経緯もありました。

 

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著者紹介

矢野健太(やの・けんた)

〔株〕パンフォーユー代表取締役

1989年生まれ。群馬県出身。新卒で〔株〕電通に入社し、中部支社にて交通広告を担当。その後、教育系ベンチャー、地域系NPO事務局長を経て、2017年に〔株〕パンフォーユーを設立。

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