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市場縮小でも事業を伸ばす!「着物」業界3社の成長戦略

2020年04月16日 公開
2023年07月12日 更新

『THE21』編集部

 

BuySell Technologies――全国のタンスから大量に買い取り、ラインナップを充実


着物の生地から作ったモンゴルの民族衣装「デール」の販売店の様子 写真提供:〔株〕BuySell Technologies

 

 昨年12月に東証マザーズに上場した〔株〕BuySell Technologiesは、2015年に事業譲渡を受けてリユース事業を開始。現在はリユース事業を専業にしており、着物はその柱になっているという。

「当社の特徴は、お客様のご自宅まで出張訪問買い取りを行なっていることです。出張訪問買い取りで高い付加価値を生み出せる商材は、お客様が自分で買取店に持っていけない、大量で、重くて、持ち運ぶのが大変なもの。着物は1着1kgほどもあり、しかも、数十着、タンス数棹ぶんもあるというご家庭がかなりありますから、まさに当社のビジネスモデルに合っているのです」(BuySell Technologies社長兼CEO 岩田匡平氏)

 岩田氏によると、全国のタンスに眠っている着物の価値は約20兆円にも上るという。しかし、価値があるものを買い取っても、売れなければ利益が出ないはずだが……。

「お花やお茶をされている方をはじめ、着物を好んで着られる方は一定数いて、十分ビジネスになっています。お求めになるのは、主に50代以上の方です」(岩田氏)

 他にも着物のリユース事業を行なう会社がいくつもある中で、BuySell Technologiesは、どのようにして売上げを伸ばしているのか。一番の強みは、扱っている着物の物量だという。

「年間100万点以上を買い取っているので、ないものはないほど幅広いラインナップが揃っています。高級なものでは、人間国宝が作った作品まであります」(岩田氏)

 そして、その物量を支えるための、社名にも入っている「テクノロジー」が、もう一つの強みだ。

「全国に約850人いるスタッフが出張訪問買い取りをしているので、一見、アナログに見えるかもしれませんが、査定から買い取り、約1,400坪もある倉庫での管理、最適な販路の判断、また、顧客管理など、すべてを自動化するITインフラを自社で構築しました。ちょうど先日、3年かけて完成したところです」(岩田氏)

 買い取った着物の販路としては、オークションなどでの卸売りが最も多いという。また、自社ECサイト「バイセルオンライン」や大手百貨店での催事でエンドユーザーへの販売も行なっている。加えて、ユニークなのが、昨年から行なっている、着物の生地のモンゴルへの輸出だ。

「買い取りのお客様には、着物を売りたいというニーズだけでなく、タンスを整理したいというニーズもありますから、それに応えるため、衣服としてはもう着られなくなった着物も買い取っています。それを廃棄するのでは、費用もかかりますし、SDGsにも反し、リユース企業としての精神にも反します。そこで、生地を使って何か作れないかと色々と試してきました。巾着袋やバッグ、ワンピースを作ってみたり、アートに使えないかと検討したりしたものの、なかなか事業化できないでいたところ、当社の社員の人脈を通じて、モンゴルの民族衣装であるデールに仕立て直すという話が出てきたのです」(岩田氏)

 日本では着物を着ている人をあまり見かけないが、モンゴルにはデールを着ている人が多くいるそうだ。絹でできた着物から再生したデールは高級品で、2~3万円程度で販売されている。モンゴルでは平均月収が4~5万円ほどだということなので、かなりの金額だ。首都ウランバートルのシャングリ・ラ ホテルに入居するブティックでも販売されているという。

「買い取った着物を1点もムダにしないよう、今後もありとあらゆる販路を探っていきます」(岩田氏)

 

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