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日本企業がイノベーションで苦戦しているのは、リサーチ法を変えないからだ



2020年05月15日 公開

佐々木康裕(Takramディレクター&ビジネスデザイナー)

数値的分析だけでは、差別化はできない

 

かつて企業にとってデータを集めることは難しく、数値的データのある企業に優位性があった。しかし、今はどの企業でもデータを集めることは容易である。そのため、従来の数値的データを基にしたロジカルな分析では、他社との差別化はできない。

そこで、注目されているのが”デザインリサーチ”です――MBA留学をやめ、米国のデザインスクールへの留学した経歴をもつビジネスデザイナーの佐々木康裕氏は言う。このたび『感性思考』(SBクリエイティブ)を上梓した同氏にデザインリサーチの具体的ステップを聞いた。

 

デザインスクール流インプット4つのステップ

私はリサーチする行為もクリエイティブであるべきだと考えています。

量的分析だとMECEの「モレなくダブりなく」を実践できますが、そこから得た情報でワクワクするような想像力は生まれないと思います。

世界的なデザインリサーチャーであるヤン・チップチェイス氏は、デザインリサーチとは「why(なぜ)」を理解するための手法だといいます。定量分析は、消費者が何をしているか(what)、またはどのようにしているか(how)を知るための手段です。デザインリサーチは定量分析からは得難い、定性情報を得るためのリサーチ手法で、フィールドワークで人間の行動観察をすることを基本としています(『ハーバード・ビジネス・レビュー』より)。

デザインリサーチとは優れたアイデアを生み出す補助装置。リサーチの仕方によって、消費者の心に響く製品を生み出すこともあれば、まったく心に刺さらない製品になることもあり得ます。

情報はそのままでは意味を持ちません。

「情報を調べた、終わり」ではなく、自分が得た情報を適切な形で伝えて、周りのステークホルダーに適切なアクションをとってもらうところまでをデザインしないと、アウトプットにはつながらなくなります。デザインリサーチで集めた情報は「他の人に理解、共感してもらう」「自分が面白いと思ったのと同じように、他の人にも面白いと思ってもらう」というプロセスが必須です。

そのために必要なのが3つのS、「structuralize(構造化する)」「simplify(単純化する)」「storytelling(ストーリー化する)」です。構造化とは、物事の全体像を見極めて、要素を整理すること。その上で人に伝わりやすいように単純化して、ストーリー化する必要があると考えています。

ここでは、3つのSをベースにしたデザインリサーチの一連の流れをご紹介します。

 

ステップ1 問いを設計する

ここ数年、「問いの設計」という言葉をよく耳にするようになりました。

今までは問いに答える力が重要だと見なされてきましたが、世の中の流れは、徐々に問いを設計する方が大事なのだという考えにシフトしてきています。

アインシュタインは、「問題解決のために1時間使えるとしたら、55分を問題のデザインに費やし、5分間を解決に使うだろう」という言葉を残しています。多くの人は、1時間を目いっぱい使って解決策を考えるでしょうが、何を解いたらいいのかをまず考えなくてはいけないということです。

例えば、「アメリカのファッション市場について調べておいて」と上司から言われたとします。

たいていはファッション誌やファッションサイトを見て情報収集するのではないでしょうか。しかし、それぐらいの情報なら上司も調べてみれば分かります。

ヴィンテージファッションが流行っているのなら、その背景にあるのは何か。もしかしたら、メルカリのようなオークションサイトで古着を買うのがアメリカの若者にとっては普通の感覚になっていて、新品の服を買うという習慣が薄れてきているのかもしれません。

それなら古着市場が盛り上がっているので、今までにないサービスが生まれる可能性もある。

そこまで予測したら、「アメリカのファッション市場で服を売るにはどんなサービスがいいか」という問いではないかと再設計できます。

このように、リサーチを開始する前に問いを定義するのは非常に重要なステップになるのだと思います。

 

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ステップ2 情報を広く深く集める >



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