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反発の声もあった「社員を個人事業主に」 それでも改革を進めたタニタ社長の”真意”



2020年05月21日 公開

谷田千里(タニタ代表取締役社長)

《社員食堂のレシピ本や「タニタ食堂」などの新企画を次々とヒットさせたユニークな健康計測機器メーカー・タニタ。同社は2017年から珍しい働き方の仕組みを導入。これについて解説した書籍も大きな話題を呼んでいる。

それは「社員を個人事業主にする」という取り組みだ。社長の谷田千里氏に意図をたずねると、「働き方改革の議論に一石を投じるため。このままだと日本は沈没する」という。一体どういうことなのか。超先進的な事例から、働き方改革の課題と本質に迫る。》(取材・構成:杉山直隆 写真撮影:長谷川博一)

※本稿は『THE21』2020年5月号より一部抜粋・編集したものです。

 

なぜわざわざ社員を個人事業主にするのか

谷田千里氏(以下、谷田)「タニタの取り組みなのに、あえて『日本活性化』と大それた名前をつけたのは、このプロジェクトが他の企業や日本全体の活性化につながると考えたからです」

――そう話すタニタの谷田氏が2017年に始めたのが、「日本活性化プロジェクト」。その最大のポイントが、「社員を個人事業主にする」ことだ。

社員から希望者を募り、その人に退職してもらい、個人事業主として業務を委託して働いてもらう。もっとも、仕事は基本的に、社員時代に行なっていた仕事が引き続き発注される。個人事業主なので働く場所や時間は自由だ。

移行時の報酬も、基本的には社員時代の給与・賞与に会社が負担していた社会保険料などを含めた「人件費」の総額をベースに設計する。

個人事業主になると、会社員時代のような一律の社会保険ではなくなるので、民間の保険を活用してカバーするなど、自身で必要な保険を選ぶようになるという。

こう聞くとあえて個人事業主にする必要もなさそうだが、なぜこの仕組みを導入したのか。

谷田「個人事業主になってもらうことで、働き手が主体性を持ってモチベーション高く働けるようになると考えたからです。そして、この取り組みでタニタを良くすることができれば、今の日本の働き方改革の議論に一石を投じられる。そんな思いもありました」

 

日本の働き方改革で抜けている視点とは

――いったい、谷田氏は働き方改革の何に危機感を覚えていたのだろうか。

谷田「それは、議論の中心が『残業(業務時間)を減らすこと』だけに偏りすぎていることです」

――働き方改革が叫ばれるようになってから、各社がいの一番に始めたのが「残業の削減」だ。昨年4月に働き方改革関連法が施行され、残業の上限規制を超えた場合の罰則が設けられたことから、企業はますます残業削減に力を入れている。

谷田「その結果、定時の17時や18時には退社することが徹底され、残業は厳しく制限されるようになりました。もちろん、過労死を招くような長時間労働は絶対になくさなければなりませんし、過剰労働を放置してきた現場は一刻も早く是正に取り組まなければなりません。この方針には賛成です。

しかし、1日8時間できっちり仕事を切り上げることこそが『是』であり、それ以上の残業は『悪』という風潮には疑問を感じるのです」

――残業削減に注力するあまり、ポッカリと抜け落ちている視点がある、と谷田氏は指摘する。それは、「従業員の能力開発」と「働きがい(主体性)」の視点だ。

谷田「私はこれまで、優秀なビジネスパーソンにたくさん出会ってきましたが、優秀な人は必ずといっていいほど、時間を忘れて仕事に没頭した経験を持っています。逆に、いついかなるときでも9~17時しか働かずに成長したという人を、私はまだ見たことがありません。

もし、若手の成長すべき時期に毎日9~17時で帰るような働き方しかしなければ、高度な仕事ができるようになるはずがありません。そんな定型的な仕事は、10年後にはAIに奪われているでしょう」

――もっとも、長時間労働を奨励しているわけではない。定時きっかりで強制的に帰らせる仕組みだけでは、やる気のあるビジネスパーソンが一生懸命働いて、自分の能力を上げようとするのを邪魔してしまう、というのが谷田氏の主張だ。

谷田「ブラック企業の経営者というと、長時間労働を強いるイメージがあります。しかし、17時になったら強制的に帰らせて、その人たちが将来路頭に迷うのを黙って見ているのもまたブラック企業の経営者だと思います」

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