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ispace「2040年、月面に1000人が暮らす街を作る」

2020年07月07日 公開
2020年07月07日 更新

【経営トップに聞く 第33回】袴田武史(ispace CEO)

 

日本の宇宙ビジネスが世界をリードするためには?

ispace
ispaceのランダー(月着陸船)

――日本が宇宙ビジネスで世界をリードするためには、何が必要だと思いますか?

【袴田】様々な要素が複合的に関係すると思いますが、1つは、グローバルな視点を持ち、様々な国の人たちとコミュニケーションを取ることでしょう。日本人には英語に苦手意識を持っている人が多いですが、他の国の人たちと議論をして、リードしていくコミュニケーション能力が必要です。

日本の宇宙産業は市場規模が小さいので、その中だけで事業を確立させるのは難しいと思います。「オールジャパン」にこだわっていると、なかなか成長できません。グローバルに事業を展開せざるを得ないのです。だから、グローバルな視点が必要です。宇宙に出てしまえば国境は関係ありません。

――御社は社員の3~4割が外国人だということですが、同業他社ではなく御社を選んで入社する理由はなんなのでしょうか?

【袴田】ランダーの開発は一生に1回あるかないかのことで、それができる場は世界でも限られています。その中でも最も活躍できる機会があると思って入社してくれているのだと思います。

また、大きなビジョンを示して、それにコミットしているので、持続性・継続性にも魅力を感じてくれているのでしょう。

――外国人社員たちとうまくコミュニケーションを取るコツは?

【袴田】当社の場合は、ビジョンが明確なので、大きな方向性が合いやすいということがありますが、違いを受け入れる心の豊かさが重要だと思います。外国人に限らず、色々な経験を持った人たちが色々な業界から入ってくると、意見が違ってくるのは当然です。それを理解しつつ、1つの目標を実現することが大切です。

――日本では資金調達が難しいと言われることもありますが、その点についてはどうですか?

【袴田】一般的には、そうだと思います。当社も2017年に100億円超を資金調達したときは大変でした。ただ、結果的にできましたから、恵まれていると思います。諸外国でも100億円の資金調達ができた宇宙ベンチャーは数少ないですから。

――本日はありがとうございました。「ムーンバレー2040」の実現を楽しみにしています。

【袴田】我々の構想は「ムーンバレー2040」で終わりではありません。「Expand our planet. Expand our future.」というビジョンは、さらにその先まで見据えています。

 

袴田武史(はかまだ・たけし) 〔株〕ispace代表取締役CEO

1979年生まれ。名古屋大学工学部を卒業後、米ジョージア工科大学大学院で修士号(Aerospace Engineering)を取得。経営コンサルティング会社を経て、〔株〕ispaceを創業。2010~18年、民間月面ロボット探査レース「Google Lunar XPRIZE」に日本唯一のチーム「HAKUTO」を率いて参戦。15年、中間賞を獲得。現在は、2021年に月着陸、2023年に月面探査を目指すプログラム「HAKUTO-R」に挑戦している。

 

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