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20代前半で出産…子育てと仕事の両立を模索して生まれた「急成長WEBサービス」

2020年06月19日 公開

端羽英子(はしばえいこ:ビザスク代表取締役CEO)

 

子どもを育てながらできる仕事を模索し、たどりついた「起業」

このビジネスを考案したきっかけは、私がダメ出しを受けたことです。

私は、20代前半で出産してから、子どもを育てながらできる仕事をずっと模索してきました。化粧品会社やベンチャーキャピタルで働くうちに、「起業して、個人が活躍できるプロダクトを作りたい」と考え始め、業界出身者や海外在住者が商品をお勧めするECプラットフォームを立ち上げようとしていました。

ところが、同僚の伝手をたどってECの立ち上げ経験がある方をご紹介いただき、相談したところ、「そのビジネスはうまくいくわけがない」と1時間にわたってダメ出しをされたのです。

その方のお話は、経験者ならではの非常に納得がいくものでした。同僚に紹介をお願いしてから相談まで2カ月が経過していましたが、もっと早くお会いしたかった。

そのときに思ったのです。「知見を求めている人と、知見を持っている人とをマッチングし、すぐにコンサルを受けられるようにするサービスがあれば、ニーズがあるに違いない」と。これがビザスクの原型です。

立ち上げ当初から、「このサービスは必ず軌道に乗る」という自信はあったのですが、世の中にないサービスでしたから、当初は苦労がありました。

様々なイベントに出ては、そこで出会った方にアドバイザー登録をお願いしたり、スポットコンサルを提案したりしていました。アナログなことばかりしていたので、「これってウェブサービスだっけ?」と言っていました(笑)。

そうして地道な活動を続けるうちに徐々にマッチング数が増加。さらに、15年の夏にベンチャーキャピタルから2回目の投資を受けたことで信用が高まり、アドバイザー登録やスポットコンサルの依頼が増えました。

 

コンサルティングをする側にもメリットがある

立ち上げから6年強が経ち、現在ではマッチング数が累計4万7000件を超えました。トヨタやパナソニック、KDDI、NTTデータといった大手企業にも活用していただいています。

中でも多い案件は、新規事業の立ち上げ。「この新素材を何かに転用できないか」「海外で売れないか?」。そうした課題に対して、外部のアドバイスを求める企業が多いのです。

商品化に至った代表的な例としては、コニカミノルタのニオイ見える化チェッカー「Kunkun body」やライオンの口臭ケアアプリ「RePERO」などがあります。コニカミノルタのケースでは、商品化までに、調香師や臭気判定士、ハードウェアベンチャーの開発担当者など、8人のアドバイザーをご紹介しました。

このサービスを始めてわかったのは、スポットコンサルを受ける方だけでなく、アドバイザーにも学びがあることです。

2019年、登録アドバイザーに調査したところ、アドバイザー活動をしたことで仕事の意欲に変化のあった方のうち、70%が「今の仕事への意欲が高まった」、73.9%が「スキルアップへの意欲が高まった」と答えました。自分の経験にニーズがあることがわかり、働くことが楽しくなるのでしょう。

求めている知見を持っている人に出会えない――。「知見の壁」にぶち当たっている人は、至るところにいます。そうした人たちがちゃんと知見に出会えるプラットフォームを作り上げていくことが、私たちのミッションです。

2020年1月にシンガポール支社を立ち上げたのは、より多様なアドバイザーを集めるため。上場したのは、知名度と信頼を高めて、マーケットを広げていくためです。

知見を持っているのは、社会的地位の高い人だけではありません。現場で一生懸命お仕事をされている方もまた、ものすごいノウハウを持っています。

一生懸命お仕事をしている方が、誰でもビザスクに登録しているという世界を作れれば、必要な知見にアクセスできる可能性が高まる。ひいては、様々なイノベーションを起こすことにつながる。ビザスクによって、そんな未来を実現させたいですね。

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