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実体経済が悪化しても株価が上がる謎…「漠然と株を買う」が危険な時代に

2020年08月06日 公開

加谷珪一(経済評論家)

 

業界再編が続く2025年までが勝負

――労働者の立場として見れば、企業間格差が広がるのは由々しき事態ですが、投資家という立場で見れば、コロナ禍でも伸びる企業は心強いですね。ただ、アフターコロナの経済が私たちの資産にどう影響を及ぼすのか、不安もあります。

「長期的な目線で資産を増やす目的なら、今までと同じようにオーソドックスな手法で投資を続けて問題ありません。

インデックスファンドやETF(上場投資信託)は、銘柄が入れ替わっていきますから、最終的にはポストコロナ社会に対応した企業が入ってきます」

――コロナ禍で、ネット証券口座の開設が相次いだニュースも目にしましたが、今は投資を始めるタイミングとして適切なのでしょうか。

「良いタイミングだと思います。もちろん、むやみに買えとは言いませんが、少し大きなリターンを得たいと考える人は、全体の2割くらいの資産を使って、個別株を運用してもいいかもしれません。

ボラティリティ(価格変動の度合い)が高いのは、危機ではなくチャンス。時代が動くときは、投資の一番重要なタイミングです。大きな資産を作った人は、時代が動くタイミングで投資をしています。

恐らく、産業界の様子が激変するここ5年が勝負所でしょう。株価は実体経済が変わった後には、すでに完成されています。

ただし、とりあえず日本株、 安全そうな自動車メーカーの株を買おうなどという漫然とした選び方は危険です。

同じ業種でも格差が広がる中で、どの企業が勝ち残る可能性があるのか。こうしたミクロな視点がなければ、これからの資産運用は難しいでしょう」

 

国内の大手企業は世界では大手ではない!?

――ボラティリティの高い個別株というと、投資初心者にはハードルが高いかもしれません。

「世界的に安定した企業から投資を始めてはいかがでしょう。業績のブレが激しいベンチャー企業と比べて、安定した大手優良企業では大きなインカムゲイン(資産を保有していることで得られる利益)が得られます。

ただし、ここで問題になるのが『そもそも、大手優良企業とは何か』という視点です。

1990年代まで、日本企業の大手は世界でも大手企業でした。ただ、日本の相対的な経済規模はここ20~30年で下がっています。日本で大手だからと言って、グローバルでも通用するとは限らないのです。  

東芝や三菱重工が好例です。グローバルの同業種は、GEやシーメンスですが、かつてはそんなに大差ありませんでした。

ところが、今やGEやシーメンスを基準にすると、東芝と三菱重工は中小零細企業の規模です。

とするなら、長期的に資産を形成したい投資家にとって、日本企業は投資対象には入りません。日本という島国の中で大手優良企業かどうかという見極めは危ないのです」

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