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「資産がすべて日本円」は危険...藤巻健史氏が注目する“お金の逃がし先”

2020年08月19日 公開
2023年02月21日 更新

藤巻健史(経済評論家)

 

アメリカ長期国債ではダメなのか?

「どうせ米国債に投資するのなら、10年、30年といった長期の米国債を買ったほうが、利回りが高くて、お得なのでは?」と考える人もいるかと思います。

確かに国債は元本保証であり、たとえ国債価格が下落しても、償還(満期)まで持っていれば必ず元本が返ってきます。アメリカがデフォルトにならない限り、損することはないということになりますが、私はやめておいたほうがいいと思います。

その理由は、10年、30年という長期間にわたって、国債を売らずに持ち続けることができるかどうかなど、誰にもわからないからです。なんらかの理由で急に現金が必要になるかもしれませんし、ハイパーインフレにより生活費が足りなくなるかもしれません。そうなった場合、満期を待たずして米国債を売らねばなりません。

その時、先ほども申したように、アメリカの長期金利が上昇することで、国債価格が下落している恐れがあります。下落時に国債を売らざるを得なくなれば、ドル建てでは損をしてしまう可能性があるのです。

また、アメリカ経済の好調が続くとすると、特に今のようにアメリカも財政ファイナンスに舵を切った以上、ハイパーとまではいかなくても、アメリカもインフレ気味になっている可能性は十分にあります。

例えば、1万ドルで購入した米国債が10年後の満期時に1万1000ドルと1000ドル増えていても、その時タクシー代10ドルが20ドルになっていたとすれば、実質的には損したことになるのです。

もちろん、今後の金利がどうなるかはわかりません。ただ、「歴史的に見て、世界の金利は今、極めて低い」という認識は持っておくべきです。私がディーラーになる直前の1979年のアメリカの10年国債の金利は、20%を大幅に超えていました。そこから考えれば、今の0.7%という金利は異常な低金利と言えます。

歴史的に金利が低いということは、いつ上がってもおかしくない(=価格が下がってもおかしくない)ということ。いつまでも金利が低いつもりでいると、資産運用をするにしても、経済を見通すにしても、判断を見誤ります。

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