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「会社人生が終わっても、人生は続く」住友銀行の副頭取が選んだ“69歳での起業”

2020年09月09日 公開
2023年02月21日 更新

吉田博一(エリーパワー会長兼CEO)

 

未来への想像力が、充実した人生を切り拓く

――50代になれば、会社員生活の先が見えてきて、モチベーションが下がる人もいるかもしれない。これからも続く人生を悔いなく送るためには、50代をどう過ごすのがいいのだろうか。

「私に、こうすればいい、という答えがあるわけではありません。私はその時々を夢中で生きてきただけです。目の前のことに全身全霊を傾けていると、自然と次にやりたいことが出てくるのではないでしょうか」

――69歳で起業して、今年で14年。82歳にして情熱はいまだ衰えを知らない。吉田氏を突き動かしているものは、いったい何なのだろうか。

「想像力でしょうね。私は、蓄電池がエネルギー産業になる未来を常に思い描いています。その思い込みが強いので、これまで続けてこられたのだと思います。そして、『こうありたい』『こういう未来を創りたい』と思ったら、それを潜在意識の中に叩き込んでいます。

毎日、仏壇と神棚に手を合わせて、リチウムイオン電池の普及を祈願しているのです。そうすると、将来の像が明確になって、『何が何でも達成させるぞ』という強い気持ちが湧いてきます。

ですから、会社員であっても、これから世の中がどうなっていくのか、想像力をいつも働かせておくことが大事だと思います。定年で自分の人生が終わると思えばそれで終わりですが、『これからこういうことがあるかもしれない』と思えば、別の未来が拓けます。

続けていくには、心と身体の健康も大切です。私は朝晩のウォーキングと、40代の頃から続けているストレッチと呼吸法を組み合わせた柔軟体操である『真向法』を毎日3回、1日も欠かしていません。その積み重ねと継続が健康を作っています」

――心の健康を保つには、「失敗したことを忘れる術」を身につけることも大切だという。

「歳を重ねると、失敗したことをいつまでも覚えています。そうすると、失敗しないようにしようと思うから、その場に止まって動けなくなるのです。挑戦を怖れないためには、失敗を忘れるのが一番です。

私の人生は、失敗の連続です。でも、失敗を忘れて、うまくいったことだけ覚えているので、自然に前に進めるのだと思います。トライ&エラーの回数が多ければ多いほど、成功の確率が高くなります。そして、諦めない限り、続けることができます。

我が社のリチウムイオン電池『HYバッテリー』は発煙、発火しない優れた安全性と温度特性、長寿命を特長としており、蓄電用では世界一の性能だと自負していますが、それはトライ&エラーの回数が多いことと、諦めずに続けてきたことの結果です」

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