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M17 Entertainment Limited「ライブ配信で日本No.1の『17LIVE』。"ライバー"を子供が憧れる職業に」

2020年09月23日 公開
2022年11月14日 更新

【経営トップに聞く 第36回】小野裕史(Global CEO, M17 Entertainment Limited)

17Live

コロナ禍で「ライバー」という職業が転機を迎えた

――現状では日本での売上が大きい?

【小野】そうですね。台湾ではサービス開始から今年で5年になるので、浸透率が大変高く、先の総統選挙でも各党の候補が「17LIVE」で演説を行なっていました。ただ、日本は台湾と比べて人口は5倍、GDPでは8倍と、市場のサイズが大きいですから。

――日本法人のトップがGlobal CEOを引き継いだのも、それが理由?

【小野】日本ではサービス開始から今年で3周年を迎えました。そろそろ新たな経営者に日本法人の運営を任せようと思っていたところ、前CEOのJoseph Phuaから、Global CEOとして「17LIVE」をリードしてほしいという打診を受けました。日本で「17LIVE」のサービスを開始させてから1年という短い期間で、日本No.1のライブ配信アプリに成⻑させたことがポイントになっていることは、もちろんあると思います。

――「17LIVE」に参画した経緯を教えてください。

【小野】私は12年間、インフィニティ・ベンチャーズというベンチャーキャピタルファンドを運営し、日本と中華圏で活動してきました。投資するだけでなく、経営者として投資先企業に入るスタイルで、〔株〕ジモティーやグルーポン・ジャパン〔株〕など、10社以上の立ち上げに参加してきました。その中で、「17LIVE」にも、創業した2015年から投資を始めました。

――なぜ、「17LIVE」に注目したのですか?

【小野】もともとライブ配信サービスは成長すると見ていて、2008年にはUstreamに投資していました。当時は通信回線の速度が遅かったりしたために、結局、Ustreamはうまくいかなかったのですが、そうした問題が解消されたので、「17LIVE」は大きく成長すると確信しました。また、今後、5Gの普及により、ライブ配信サービスが急速に発展することも見越しています。

 私自身、2008年頃から、個人的にライブ配信を行なっていました。私はマラソンをするので、ランニングのライブ配信なども実施していました。台湾でJosephとライブ配信の未来について語り合ったときは、「自分自身が実感してきたインタラクティブコミュニケーションの未来がここにある!」と思い、非常にワクワクしたのを覚えています。

――実際に大きく成長し、日本でのシェアも高くなったわけですね。

【小野】そうですね。ただ、ライブ配信サービスでのシェアはあまり重視していません。ライブ配信サービスの市場全体がまだまだ成長過程にあるからです。むしろ、Netflixをはじめとした、動画配信サービス全体の動向を注視しています。

――これからの方針は?

【小野】ライブ配信市場を健全に広げていきます。グローバルはもちろん、日本でも、ライブ配信市場はさらに大きく伸びます。そして、今の子供たちは将来就きたい職業にYouTuberを挙げますが、ライバーが挙がるようにしたい。ライバーを憧れの職業にしたいと思っています。

 このほど、「17LIVE」でライブ配信を行なうライバーの収入に関する調査を行ないました。コロナが世界で猛威を奮い始めた今年2月から4月にかけて、「副業による収入の平均=6万円/月」以上の収入を単月で得たライバーは約4200人。緊急事態宣言が発出され、経済が停滞している中で、ライブ配信は雇用を創出していたことになります。同じく6月から8月にかけては、約8400人に倍増しており、コロナ禍において、ライバーという雇用の創出がより加速した結果が見えています。非接触で手軽に行なうことができ、収入も得られる「ライバー」という職業が、今年、大きな転換期を迎えたことは明らかです。

 ライブ配信のジャンルを拡大させ、様々なライバーが配信を行ない、エンタテイメントを発信し続けることによって、ライバーが憧れの職業に挙げられる日は、そう遠くないと感じています。

――ちなみに、「健全に」というのは?

【小野】例えばポルノのような不健全なコンテンツがライブ配信されると、業界全体が毀損してしまいます。当社では、24時間365日、AIと人間によるチェックにより、肌の露出やコメントの内容、飲酒、喫煙、運転などライブ配信中の禁止事項を監視しています。業界のリーディングカンパニーとして、特に重視している点の1つです。

――日本以外で、特に注力する国・地域は?

【小野】グローバル戦略に関してはやはりマーケットが大きいところを優先していきます。

――マーケットが大きいといえば、中国があります。

【小野】中国本土はライブ配信市場が成熟しており、競合が多く、インターネットの世界では他国との隔たりも見られるため、参入は考えていません。米国、そしてインドは伸び代があると見ているので、今後も注力していきます。

 米国では、ライブ配信の文化がまだあまり拡がっていないのが実情です。「17LIVE」は英語圏では「LIVIT」というサービス名で展開していますが、日本で行なってきたようにコンテンツを増やし、その中から、歌やダンス、スポーツなど、様々なジャンルで活躍するライバーを生み出すことで、ライブ配信という文化を広げていきたいと考えています。

 インドに関しては、M17のライブエンタテインメント事業の一つである「MeMe Live」が既に展開しています。ご存じのように、インドはIT大国として知られ、世界中の企業が拠点を構えるなどしています。ライブ配信とも親和性が高いと考えており、MeMeでのマーケティングノウハウを駆使して展開を加速させていきたいですね。

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