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デキる上司は奉仕型!? GAFAに学ぶ「部下の主体性を引き出す方法」

2020年10月09日 公開
2023年01月13日 更新

ピョートル・フェリクス・グジバチ

ピョートル・フェリクス・グジバチ

「厳しさへの耐性」には世代による差が大きい

しかし時には、相手の「受け容れられる程度」の目算を誤ることも起こりうる。

「最も発生しやすいポイントは、部下との世代間ギャップです。40~50代なら、ミレニアル世代の部下に『これしきのことで傷つくの!?』と驚くこともしばしばではないでしょうか」

現在20~30代のミレニアル世代と上司世代とでは、受けてきた教育が対照的だという。

「昔の教育はとにかく厳しかったですよね。知識を詰め込み、先生は生徒をガンガン怒鳴る。これは日本に限らずアメリカにもあった傾向ですし、私の母国・ポーランドには小学生にも留年制度があったくらいです。対して、ミレニアル世代の教育制度はヒューマニスティック。歴史上初めて『子供に合わせる教育』が導入された時代なのです」

ゆえに、両世代の「厳しさへの耐性」には著しい差がある。

「ミレニアル世代は褒められて育っているので、会社に入って厳しくされてショックを受けます。上司はそんな部下を、打たれ弱すぎると感じる。タスクを指示するたび『これで私はどう成長できますか』などと聞かれ、『実力もないうちから自己主張ばかりして』と思うこともあるでしょう」

しかし「わからない」と言っているだけでは距離は縮まらない。

「わからないのは、お互いに理解する努力をしていないだけ。若い人たちが個人尊重の教育を受けてきたことを考えると、トップの指示より自らの納得が重要になるのだろうな、と想像できますね。共感はできなくとも、『わからない』は消えるはずです」

 

不満や愚痴を翻訳すると「お願い」になる

世代差、性差、ポジション、バックグラウンド。様々な人々が集まる以上、揉めごとはいつでも起こりうる。

「しかし、対立は悪い事ばかりではありません。言い換えれば、価値観を交換するチャンスなのです」

揉めごとというピンチを、建設的な価値観交換の場にするコツは何だろうか。

「不満・愚痴・悪口を翻訳することです。ネガティブな言葉のほとんどは、本当は『お願いごと』なのです。『あの人、言い方がきつくてキライ』は『優しく言ってほしい』ですし、『彼女、遅刻ばかりよね』は『早く来てくれたら嬉しい』。

この法則を当てはめれば、様々な場に応用できますね。1on1で同僚の愚痴が出てきたときに『そうか、なら君は彼に、どうなってほしい?』と聞いたり、非難を受けたときも『私に○○と言ってほしかったのか』と答えたりできます」

ここでは、相手の言い分を素直に受け止める姿勢が必要だ。特に上の立場にいる人ほど、謙虚な態度を忘れてはならない。

「自分は部下よりエライのだ、とふんぞり返るのは問題外。上司は確かに部下より大きな権限を持っていますが、同時に、部下に成長機会を提供し、ボトルネックを解消し、仲間と快適に働ける環境作りをするなどの、支援をするために存在します」

このような「サーバント(奉仕)型」の上司像が近年、注目されている。その働きかけの目的は、部下が自律的・自主的に働く環境を作ることに他ならない。

「皆さんの会社にも組織図があるでしょう。それは、上から下へと枝が広がる三角形をしていますね。その上下を、グルリと逆さまにしてみてください。

すると一番上に来るのは、部下たちがいる『現場』、つまりお客様が受け取る価値が生み出される場です。この場所で良いアウトプットができるよう支えるのが上司……実際のところは「下司(かし)」とも言えるでしょう。

会社の価値を生み出す人たちを日々下支えするのが、マネジャーの役割なのです」

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