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アドラー流は「部下を褒めない、叱らない、教えない」…“自分で動く”人材の育て方



2020年11月19日 公開

小倉広(組織人事コンサルタント/心理カウンセラー)

 

「叱る」代わりに課題解決に「協力する」

「叱る」ことは、アドラー心理学では「勇気くじき」に他ならないと考えます。

「叱る」とは、相手のやっていることにダメ出しをして、相手を操作しようとすることです。すると、叱られた側の自己有能感や自己決定感が減退します。叱られてばかりいると、勇気がどんどん減っていくわけです。

では、叱る代わりにどうすればいいのでしょうか。

「協力しなさい」というのが、アドラー心理学の答えです。

例えば、営業成績が振るわない部下がいた場合、上司が「それじゃダメだ。違うだろう」と叱りながら部下にやらせるのではなく、部下自身がどうやればうまくできるようになるかを自分で考えながら問題に取り組み、それに上司は協力する、というスタイルを取るのです。

協力は、三つのステップを踏んで行ないます。

第1のステップは、上司と部下の間での「目標の一致」です。相手が営業成績の振るわない部下だとすれば、双方が合意できる目標は「営業成績を上げること」になるでしょう。

目標が一致したら、目標達成のための具体的な方法はなるべく部下に任せます。

共にメジャーリーガーだったイチロー選手と松井秀喜選手のバッティングフォームがまったく違っていたように、目標達成のための最適なアプローチは人により異なります。上司が自分のやり方を得意分野や価値観の異なる部下に押しつけても、うまくいくわけがありません。

第2ステップは「許可を取る」です。

目標達成への進捗状況について部下と話したいときには、「例の件について、少し話す時間を作ってもらっていいかな?」というように、必ず部下から許可を取るようにします。その目標を達成しなくていけないのは部下自身であり、上司はサポートをする立場にすぎませんから、上司と話し合いの時間を持つかどうかも、部下自身に判断させたいからです。

そして第3ステップでは、「あなたが目標を達成するために、私に何かできることはありませんか」と、協力を申し出ます。

このときに部下から、「こういう方をご存じだったら紹介してくれませんか」と言われれば紹介してあげればいいし、「こんな場面では、いつもどうされてきましたか」と聞かれれば、自分の経験談を話せばいいでしょう。

大切なのは、要望があったことについてだけ協力することです。もし部下が「今の段階では、自分一人で頑張ってみます」と言ったなら、任せて見守る。それも立派な協力です。

そして、結果についても、きちんと部下自身に責任を取らせます。例えば、「結果が出せなかったら担当から外れてもらう」とあらかじめ部下と合意をしたうえで課題に取り組ませるというのも、責任の取らせ方の一つでしょう。

 

「責任は俺が取る」では部下は依存するだけ

世の中では、「自由にやってくれ。責任は俺が取る」と言う上司が良い上司だと思われがちですが、これは間違いです。上司が責任を取ってしまうと、部下が無責任になり、上司に対する依存が生まれるからです。

課題解決の主役は、あくまでも部下自身。部下が自分で課題に取り組み、その結果に対しても自分で責任を取ってもらいます。

ただし、「お前の責任なんだから、お前がやれ」と部下を冷たく突き放すのではなく、部下が目標を達成するための支援は惜しまない態度を取り続けることが重要です。

上司のサポートを得ながらも、目標を達成できた部下は、「自分自身の力で課題を解決できた」という自信を得ます。そして、次に新たな困難に直面したときに、それに立ち向かえるだけの勇気が、部下の中に育まれていきます。

 

原因分析ではなく解決策に目を向けよう

アドラー心理学が「叱ってはいけない」と考えるのは、それが勇気くじきにつながるからですが、上司と部下との関係で、勇気くじきにつながる行為がもう一つあります。

何かトラブルが発生したときに、「問題が起きた原因は何だ?」「担当は誰だ?」「何でこんなミスをしたんだ?」というように、原因探しを行なってしまうことです。犯人探しと犯人の吊るし上げが始まると、犯人とされた人物は、間違いなく勇気をくじかれます。

機械がトラブルを起こしたときは、その原因を分析することは、改善を図るうえで必要不可欠な行為です。しかし、人が起こしたトラブルについては、原因を追究することは逆効果でしかありません。犯人とされた人は勇気を失い、以後、失敗を恐れて積極的な行動を取らなくなるからです。

上司が原因追究ばかりしていると、チーム全体が勇気のない組織になるのです。

人に起因するトラブルの原因分析は、上司が自分一人でやれば十分です。部下と話すときは、「誰がこんなことをしたんだ」という原因分析ではなく、「どうすればこの問題を解決できるか」という解決策にフォーカス(焦点)を当てるようにしてください。解決策を考えることには、部下は勇気をくじかれることなく、前向きな気持ちで取り組むことができます。

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