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330年続く老舗が「古くなった」と思われない理由…不易流行の経営術



2021年01月10日 公開

山本嘉一郎(山本山代表取締役社長)

山本嘉一郎氏

日々目まぐるしく変化するビジネスの世界で、長きにわたって事業を続けている企業は、どのような考え方で仕事をしているのか。その秘密に迫るべく、お茶と海苔を商う老舗企業である山本山の代表取締役社長山本嘉一郎氏に話を聞いた。
(取材・構成:杉山直隆)
(写真撮影:まるやゆういち)

※本稿は『THE21』2021年1月号より一部抜粋・編集したものです。

 

過去330年の歴史に執着しない

山本山と言えば海苔のイメージが強いかもしれませんが、もとは1690年、元禄時代に初代山本嘉兵衛が日本橋で始めた日本最古の煎茶商です。永谷園の創業者の先祖に当たる永谷宗円が発明した煎茶を売り始めました。

1835年には、6代山本嘉兵衛徳翁が自ら玉露を発明しています。海苔を扱い始めたのは戦後のこと。代々山本家が当主を受け継ぎ、私で10代目になります。

しかし、この過去330年の歴史に囚われたくありません。私はそう考えています。社員にも事あるごとに「過去は大事にしなくていい」「『昨年、こんなことをやりました』なんて聞きたくもない」と伝えています。

先人を軽んじているわけではありません。何より大切なのは、お客様に喜んでいただくこと。そのためには、過去の踏襲に甘んじることなく、今日を一生懸命生きることが重要だと考えています。

お客様の求めるものは時代によって変わってきますから、当然、当社もそれに合わせて変わらなければなりません。そう考えると、過去をひきずっているわけにはいかないのです。

当社の歴史を振り返ると、新たな挑戦を絶えず繰り返してきました。玉露の発明や海苔への参入はその一例。

この業態にしては海外進出も早く、1970年にはブラジル・サンパウロ、75年には米国ロサンゼルスに現地法人を設立し、日本茶や海苔の他、ハーブティーを販売し始めました。

2017年からは、商品のリブランディングに着手しました。商品構成に統一感がなくなっていたので見直し、ロゴや全商品のパッケージのデザインを刷新したのです。

18年には、創業の地に建った日本橋高島屋三井ビルディング内に本社を置き、1階に「山本山 ふじヱ茶房」をオープンしました。外国人のお客様に「これぞジャパニーズ」と感じていただける店を目指し、ニューヨークのカフェのような雰囲気の中で、お茶やお食事をご提供しています。

老舗と言うと創業からの歴史を守っているように思えるかもしれませんが、現状維持をするだけでは、常連のお客様にも「古くなった」と思われてしまいます。

人間の感覚は時代と共に変わるものです。古いと思われないためには、商売を受け継いだ人たちが時代に合わせた取り組みをすることが大切です。

そして、その積み重ねを振り返ったら、結果的に、歴史になっているのだと、私は考えています。

先代である父からは「山本山の伝統はこうだ」とか、「山本山はこうしなければならない」といった教えはまったく受けていません。先代もまた、「先代の自分と同じことをする必要はない」と考えているからでしょう。

 

店舗には数字より大切なものがある

今のお客様に合った商品やサービスを提供するためには、常日頃から、お客様の視点を持つことが欠かせません。

そのために私は、来店されたお客様の行動をつぶさに観察しています。

店に入ったら何に興味を示すのか、どの商品を手に取る人が多いのか……。

店で直接見ていることもありますし、外食に出かけたときは、他のお客様や従業員がどんな行動を取っているのか、店のオーナーであるかのように観察しています。

私が知りたいのは、お客様の行動の背景にある心理です。それを掴むことで、今のお客様の好みが見えてきて、海苔やお茶の商売のヒントが得られます。

一方、売上や来店客数といった「数字」は重視していません。数字で見た途端に、視点がお客様から売り手や作り手に変わってしまうからです。

私は商品のことを品番で呼びませんし、従業員にも「品番で話すな」と言うのですが、これも作り手や売り手寄りの思考に入ってしまうからです。そうした社員の視点を意識的に排除することで初めてお客様の視点で物事を見ることができると考えています。

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