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はるやまホールディングス「我々は『スーツ屋』ではなく『ビジネスウェア屋』」

2021年01月21日 公開
2022年12月26日 更新

【経営トップに聞く 第43回】治山正史(はるやまホールディングス代表取締役社長)

治山正史

「健康」などの付加価値を深化させる

――御社はスーツを中心に事業を展開してきましたが、この本ではカジュアルな服装が多く紹介されています。

【治山】我々は「スーツ屋」ではありません。「ビジネスウェア屋」です。ですから、ビジネスウェアがスーツ中心からカジュアルへと変われば、スーツにこだわらず、カジュアルへシフトしていけばいい。ビジネスウェアは、働き方がどう変わっても、一定の需要があると思います。

――開発する商品を変えていく?

【治山】商品開発については、コロナ禍の前から、当社における服装の歴史上、初めてのチャレンジをしています。

 服装は、人類が服を着始めたときから、3つの機能を担ってきました。まず、外圧から身体を守ること。そして、暑さや寒さを和らげること。3つ目が、自分を良く見せることです。従来はこれだけでしたが、4つ目の機能として、「健康」にチャレンジしています。

 衣食住のうち、「食」はもちろん、「住」も健康志向が進んでいます。加湿器が普及したり、安眠枕を使う方が増えたり、シックハウス症候群の対策をしたり、といったことです。「衣」については、「快適かどうか」くらいで、あまり健康志向が進んでいないのですが、我々としては「身体に良いかどうか」という基準で服を選んでいただきたいと思っています。

――2015年に「スーツで日本を健康にする宣言」をしていますね。

【治山】2015年の宣言では、健康をサポートする商品を開発することと、お店を地域の健康支援の拠点にすること、社員の健康を応援することの3つを約束しました。

 宣言をしたきっかけは、2011年の東日本大震災でした。我々も40店舗ほどが被災し、お客様もスタッフも被害を受けました。そのとき、現場に行って、瓦礫を見て思ったのは、「一番大事なのは命であり、健康だ」ということです。我々はもっと健康にコミットすべきだ。健康に良い商品を出し、健康に良いお店作りもしようと、プロジェクトを始めました。

 ただ、振り返ってみると2009年にインフルエンザ対策スーツを出していますから、それよりも前から健康に取り組んでいたことになります。特殊コーティングをすることで、付着した新型インフルエンザA型(N1H1)の99.94%を不活性化させる商品です(※現在は販売していない)。

――健康宣言を出した2015年には、ストレス対策スーツを発売しています。

【治山】脳波でストレスを計測しながら、様々な素材やデザインを試して開発したものです。

 他にも、例えば2020年8月には、マスク内の暑さやムレ対策として、「下が開いてるi-Mask(アイマスク)」を発売しました。湿度が高いと熱中症になりやすいので、呼気を逃がしてマスクの中の湿度が高まらないようにしています。

 発売してみると、マスクに覆われる部分の肌へのダメージを減らせるということで、季節を問わず、多くのお客様に愛用していただいています。

――カジュアルな商品も健康を意識して開発している?

【治山】抗ウイルスや抗菌、防臭などの機能を持たせた商品があります。

 また、着ることで気分が高まる服装をしていただくことは、「心の健康」にも良い。特に、テレワークによって人と話す機会が少なくなり、家庭の中と外との切り替えも難しくなって、ストレスが溜まりがちな状況では、重要なことだと思います。本を出したのには、気分が高まるコーディネートをしていただきたいという思いもあります。

 2020年10月に「P.S.FA」で『鬼滅の刃』とコラボしたネクタイを発売しましたが、キャラクターものを身に着けていただくことで気分が高まることもあると思います。

――店舗への来客については、コロナ禍の影響を受けていますか?

【治山】心拍数や肌年齢、骨年齢などの様々な検査を受けられたり、酸素カプセルに入れたり、フットマッサージを受けられたり、サプリメントが置いてあったり、カフェコーナーを設置するなどのサービスを展開する 「ほっとひと息ステーション」が現在54店舗あって、活用していただいているお客様が増えています。家に籠っているストレスを解消したいというニーズもあるでしょうし、健康への関心が高まっているのだと思います。

 こうした店舗は、今後も数を増やしていきたいと考えています。

――店舗での販売高は?

【治山】それは、やはり厳しいです。

 アパレル業界全体に言えることですが、服は人に見てもらってほめてもらうためのものでもありますから、外出が減って人に見られる機会が減ると、需要が減ります。

 当社も、ショッピングセンターが閉店して最悪の状況だった緊急事態宣言のときからは回復していますが、前年並みにまでは届いていません。

 市場では、部屋着を含めた実用衣料と安い衣料へのベクトルが強く働いています。我々としては、健康やキャラクターとのコラボをはじめ、新しい付加価値をいかにつけるかが、これまで以上に問われていると思います。

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