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はるやまホールディングス「我々は『スーツ屋』ではなく『ビジネスウェア屋』」

2021年01月21日 公開
2022年12月26日 更新

【経営トップに聞く 第43回】治山正史(はるやまホールディングス代表取締役社長)

治山正史

「大きなサイズ」の需要はまだまだ満たせていない

――ECの状況は?

【治山】伸びていますね。家にいる時間が長くなったことも要因の1つだと思いますし、これまで使ったことがなく、便利さに気づかれていなかった方が使われるようになったことも、大きな要因だと思います。

 でも、お店がなくなることは絶対にありません。ECが浸透している米国や中国でも、その比率は20~30%台。リアル店舗がマジョリティです。

 リアル店舗には、ECにはないものがあります。

 まず、予期せぬ偶然の出会い。本も、例えば松下幸之助さんの本を買いたいと思って書店に行くと、稲盛和夫さんや本田宗一郎さんの本も目に入って、興味を持って買う、ということがありますよね。ECなら、いつでもどこでも簡単に欲しい本を買えますが、偶然の出会いは起こりません。これは、衣服でも同じです。

 リアル店舗では、スタッフの接客など、人との出会いもあります。

 また、衣服の場合は、実際に商品に触れたり着てみたりして、感触を確かめることが重要です。こうした体験は、ECでは得られません。

――スーツ中心からカジュアルな商品も多く扱うように変わったことで、店舗スタッフの教育も変わりましたか?

【治山】商品知識など、いわば左脳については教育できていますが、右脳の改革は時間がかかると思います。コロナ禍が始まってから、まだわずか10カ月ほどですから、意識改革が間に合っていないところがあります。

 ただ、コロナ禍による変化は、リーマンショックや東日本大震災と違って、時間が経てば元に戻るものではないと考えています。今、起きている変化は、不可逆なものですから、お店のスタッフの意識改革は必要不可欠です。

――アフターコロナにおいても、ビジネスウェアがスーツ中心ではなくカジュアルなものも多いとなると、紳士服業界だけでなく、幅広いアパレル企業と競合することになりませんか?

【治山】そうなるでしょう。異種格闘技です(笑)。巨大なアパレル企業とまともに競争をしても勝ち目は少ないですから、自分たちの得意技を見直すことが必要です。我々にとっては、例えば、健康も得意技の1つだと考えています。

――その他、今後、さらに注力していくポイントは?

【治山】先ほど、リアル店舗はなくならないというお話をしましたが、もちろん、ECにも力を入れていきます。

 また、「フォーエル」はメンズの大きなサイズの衣服でシェア1位なのですが、まだまだ深掘りできると思います。人口の約3%だけを対象にしたビジネスですが、この方々のための商品は、まだ足りていないからです。

 マズローの欲求5段階説では、一番下に生理的欲求があり、その上に、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、そして一番上に自己実現欲求があります。普通サイズの服は、生理的欲求や安全欲求に応えていることは当たり前で、社会的欲求より上の欲求にいかに応えるかで競争しています。しかし、大きなサイズでは、生理的欲求にも十分に応えられていません。

 東日本大震災で被災地のお店が営業できなくなったとき、大きなサイズの下着を手に入れるために100kmも先のお店に来られたお客様がいました。そして、嬉し泣きをされるんです。それほど、大きなサイズのお客様には困っている方が多い。

 さらに商品を充実させて、そうした方々にご提供していきたいと思います。

《写真撮影:まるやゆういち》

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