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デジタルグリッド「買い手にとって安く、売り手にとって高い再エネを実現」



2021年02月07日 公開

【経営トップに聞く 第44回】豊田祐介(デジタルグリッド社長)

環境価値を自動で取り引きする機能も

デジタルグリッド

――DGPには環境価値の取引をする機能もあるということですが、これはどういうものでしょうか?

【豊田】自社で発電した再エネを自社で使うと、その分を「J-クレジット」や「グリーン電力証書」などというものにして売買することができるのですが、従来は検針員が1件ずつ訪問して調べていたので、クレジット化や証書化にコストがかかりました。

デジタルグリッドコントローラ(DGC)という当社のデバイスを設置していただき、DGPを使っていただくと、使用した電力量を計測し、秘密鍵をかけたうえでクラウドに上げ、クレジット化や証書化をするところまで、自動でできます。環境省に制度を一部変えていただいて実現できました。

――御社の売上は、どこから得ているのですか?

【豊田】電気の売買をしたときに、システム利用料のような形で手数料をいただいています。売買が成立しない限り、料金はかかりません。

――DGPのようなものは、海外にはあるのでしょうか?

【豊田】電気のPtoPでの取引では米国のLO3 Energyが有名です。当社が実証実験を行なったのと同じくらいのタイミングで、各家庭を自営線でつなぎ、家庭間で電気の売買をする実証実験を、ブルックリンで行なっています。丸紅や京セラも出資しています。

関西電力が出資している豪州のPower Ledgerという企業もありますし、他にもWePowerという企業もあります。

2016年頃にブロックチェーンが話題になって、それを電気のPtoPの取引に応用しようということで、同時期に世界各地でPtoPの電力取引の企業が登場しました。

ただ、電気は世界各国でレギュレーションが違うので、海外のサービスを日本にすぐに持ち込むことはできませんし、当社のDGPをすぐに海外に持っていくこともできません。

――豊田社長がデジタルグリッドに関わるようになった経緯は?

【豊田】当社の社名になっている「デジタルグリッド」というのは、電源開発〔株〕(J-POWER)を経て東京大学大学院の特任教授になられた阿部力也先生が提唱したP2Pの電力網のことで、それ自体はブロックチェーンが登場する前からありました。私がデジタルグリッドに出会ったのは、2008年に阿部先生の研究室に入ったときです。

阿部先生のもとでデジタルグリッドの研究をして、非常に面白いと思ったのですが、当時は再エネに関心を持っている人が世の中にほとんどいなかったので、卒業後は投資銀行に入社しました。

ところが、東日本大震災以降、再エネへの関心が急激に高まりました。その普及のためにFIT制度が始まったことで再エネの開発や投資も進み、私も投資銀行で多くの案件に携わらせていただきました。

しかし、FIT制度は終わります。その後も再エネを広げていくためにはデジタルグリッドの技術が必要だということで、2017年に阿部先生たちによって当社が設立されました。

私が参画したのは2018年で、2019年に社長に就任しました。

――最後に、今後の展開についてお聞きしたいと思います。御社は再エネの普及を推進していますが、再エネ100%の世界を目指しているわけではない?

【豊田】最終的にはカーボンニュートラルにしなければなりませんが、太陽光発電以外の再エネはまだコストが高くて、補助金なしでは普及しづらいと思います。太陽光発電だけでも、蓄電池を使えば再エネ100%にできるかもしれませんが、現状では蓄電池のコストも高い。太陽光発電以外の再エネや蓄電池のコストが下がらない間は、火力発電と組み合わせることが大事だと考えています。

――太陽光発電のコストは、まだ下がりそうですか?

【豊田】そろそろ底打ちになるだろうとも言われていますが、環境政策を重視するバイデン大統領が就任したことで、世界中で再エネへの投資がさらに進めば、もっと下がるかもしれません。

また、太陽光発電はタービンを回さないので装置が壊れにくく、長持ちします。管理も草を刈るくらいでコストがかからないので、減価償却が終われば、かなり安く電気を作れるようになります。

風力発電も、太陽光発電ほどではないにせよ、減価償却が終われば、電気の価格を大きく下げられます。

安い再エネが増えれば、地球にとっても、経済にとっても、望ましい。これほど環境と経済合理性が両立するビジネスは珍しいんじゃないでしょうか。

――まずはDGPを使う企業を増やしていく?

【豊田】そうですね。従来の電気の買い方と違うので、契約書のレビューやお客様の不安の解消に、1件ずつ時間がかかっている状態ですが、使っていただく大手企業が増えれば、他の企業にも安心していただけて、さらに使っていただける企業が増えていくと思います。

また、大企業と直接契約ができた再エネの発電企業は、金融機関から借り入れをしやすくなり、事業を拡大しやすくなりますから、その点でも再エネのさらなる普及につながっていくと思います。

 



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