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意外とビジネスチャンスにあふれるモロッコ

2021年02月09日 公開
2023年03月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(59)石澤義裕(デザイナー)

モロッコ

メディナ(旧市街)のたこ焼き屋さん。8年前、関西出身の旅人が伝授したそうです。師匠、コロナ禍でもお店は続いています。

 

感染爆発のせいで、モロッコに1年

軽キャンピングカーで、地球半周中の旅フーフです。

去年の1月、ヨーロッパの冬を避けてモロッコに逃げたら、コロナ騒動で国境封鎖。

夏に国境は開いたものの、次の目的地イタリアの感染爆発に恐れおののいているうちに、1年が経ってしまいました。

引きこもっていると、1年って速いですね。

今年はなんとかコロナを避けつつヨーロッパを抜けて、ロシアのウラジオストックまでたどり着きたいのですが、実は去年、ロシアから日本へのフェリーが撤退しました。

フェリーが復活しないことには、たとえコロナが収束しても帰国できません。

ということは、このままアフリカの地で果てよ、というアラーの思し召しかもしれません。

それが運命ならば、余生を有意義に過ごすべく……、というか、暇だとロクなことを考えないので、暇をつぶすべく起業します。

一攫千金を狙うと身代を潰しかねないので、その日の食い扶持を得られればいいさ的な地道な商売です。

 

ヨーロッパは意外と近い?

アフター・コロナにおける海外起業について考えました。

第一条件は、家賃がかからないこと。

これに尽きます。

以前は、旅人の海外起業といえば、宿か食堂でした。

しかし振り返ってみると、サーズだのマーズだの豚インフルエンザだのコロナだのと、病気系の災害は意外に多い。

賃貸物件では家賃地獄に陥りやすく、「Go To なにがし」でとどめを刺されます。

アフター・コロナでは、家賃のかからないことを旨とし、自宅でできるマイクロ・ビジネスを目指します。

いつロックダウンを食らっても、日頃から在宅勤務であれば影響を受けません。

三密も避けられます。

広い場所を必要としないとなると、ハンドメイド系が比較的簡単です。

例えば妻Yukoは、15年前から旅先で蝋引き糸で指輪とかネックレスを編んでいます。

南アフリカのネックレス

南アフリカで編んだネックレスです。

 

これが最適かと思ったのですが、大きな欠点がひとつありました。

国境を封鎖されると、海外から宝石を仕入れるのが難しい。

アフター・コロナのビジネスは、仕入れ先は国内、都市間移動が禁止になることもあるので、可能な限り「近所」にすべきです。

どこにいても仕入れに苦労しないハンドメイド系となると……。

ありました!

ボクらが住んでいる民泊のオーナーが、もうすでにその手で起業していました。

彼女はフランス人で、小物の仕立て屋さん「布もの工房」です。

カバンとか巾着袋とか、クッションカバーや鍋つかみ等々、布製品を作って売っています。

先行投資は、ミシンだけ。

布は近所で買えるごく普通のものですが、アフリカのデザインなので欧米人にはエキゾチックです。

物価の安いモロッコで作り、物価の高いフランス、スペイン等のヨーロッパへ売る。

アフター・コロナというより、グローバリゼーションの世の中では、普通に商売の基本かも。

去年の春頃、コロナが流行り出したころの彼女は、マスクを2000円以上で売っていました。

高っ!と思ったのですが、お客さんはフランス人ですから、無茶な価格設定ではないようです。

そのほか、例えば巾着袋を例にとってみると、型紙等の準備を除けば製造時間はひと袋30分。1日8時間働いて16袋です。

売価を2000円にすると(マスクが2000円で売れるヨーロッパだから、決して高くない!)、一日32,000円。

原価は200円くらいなので、梱包、送料、その他経費を引いても、一日2万円。

話半分にしても、一日1万円です。

ひと月に20日働いて、20万円。

生活費が夫婦ふたりでひと月8万円のモロッコですから、貯金が貯まってたいへんです。

 

営業はどうするんだ?

って声が聞こえてきますが、ここがポイント。

フランス嬢いわく、SNS一本でOK!

というのも、コロナ前からすでに目先の効いたモロッコの若者がInstagramやFacebookでヨーロッパ相手にハンドメイド品を売っていました。

同じものを売っているとやがてネタが尽きるだろうと思ったら、Webサイトの「Pinterest」を覗くと買いたくなるほどアイデアが載っています。

モロッコとヨーロッパは頑張れば泳げる距離ですからデリバリー的に問題なく、小包1kgで2,000円くらい。

ちなみにコロナがなければ、モロッコ・フランス間の往復の飛行機代は1万円なので、出張販売も可能です。

というわけで、アフター・コロナの海外起業の基本方針は、

1家賃がかからない自宅オフィス(欧米に近いこと)

2国内で仕入れができる材料でハンドメイド

3送料を安く抑えられる、小さくて軽いもの

4SNSで営業

5お客さんは欧米

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