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すぐやる人は「仮」の使い方が上手い? 先延ばしがなくなる「10秒アクション」

2021年02月24日 公開
2023年02月21日 更新

大平信孝(アンカリング・イノベーション代表)

大平信孝

「10秒アクション」から始めてみる

この10秒アクションは、私が独立当初から提唱し続けているとてもシンプルなメソッドで、毎日10秒、何か「自分の望む姿に近づくためのアクションをとる」というものです。

実は、いま読んでくださっているこの本も10秒アクションのおかげで完成させることができました。「毎日1時間ちゃんと執筆しよう」と考えていたら、おそらく完成までにさらに1年くらいかかっていたでしょう。

集中して執筆できる静かな場所を確保してから、美味しいコーヒーを用意してから、睡眠をたっぷりとって頭がスッキリした状態にして、未完了事項を抱えていない状態でなどと諸条件を揃えようとしていると、1時間ぐらいは軽く過ぎてしまいます。

本書を執筆中は、私自身も呪文のように「まず10秒アクション」と唱えていました。参考までに、私がこの本を執筆するために決めた10秒アクションは5つあります。

●ワードを開き、なんでもいいので一言書き始める
●本の全体構想を書いたメモを眺める
●本の目次を眺める
●前回書いた文章を音読する
●本執筆のためのカフェに行くために、パソコンをバッグにしまう

これらの「10秒アクション」のおかげで、体調がすぐれなかったとき、寝不足のとき、前日の疲れが抜けずにダラダラしたいとき、思うように文章が書けずにスランプ状態に陥ったとき、未完了の仕事が溜まりすぎてパニック状態のときも、なんとかコンスタントに執筆し続けることができました。

 

「やる気待ち」をせずに動く

10秒アクションが効果的なのは、脳の仕組みに沿っているからです。第一に、人間の脳は生命維持のため、できるだけ変化を避け、現状維持しようとする「防衛本能」が働いています。

今までの習慣を一気に変えて新しいことを始めようとすると、最初の数日は気合いや根性でなんとかできても、長続きせず三日坊主やリバウンドしやすいのです。つまり、一気に完璧に物事をやり遂げようとすることは、脳の仕組上難しいわけです。

第二に、その反面、脳は可塑性(かそせい)という性質があり、ほんの少しずつであれば変化を受け入れることができます。つまり、10秒という小さな行動であれば変化を嫌う脳でも対応できるのです。だから、「まず10秒アクション」に着手することは、脳の仕組みに適っているわけです。

第三に、まず動くことで、脳の側坐核(そくざかく)という部位が刺激されてドーパミンというホルモンが出るといわれています。つまり、たとえ10秒でもやる気を待たずにまず動くことで、「やる気スイッチ」がオンになるので、「仮行動」をしやすくなるのです。

 

たかが10秒、されど10秒

仮行動に着手するには、10秒アクションが効果的なことは理解していただけたでしょうか。そうだとしても、「たった10秒」ではたいしたことができないとバカにされている方もいるかもしれません。10秒は、あなたが思っているよりもたくさんのことができる時間です。

また忘れてはならないのは、この10秒アクションは、あなたが決めた仮行動に着手するための着火剤の働きをしてくれるということです。10秒試してみてスムーズにいくのであれば、10秒といわずそのまま続けてください。

10秒アクションがきっかけとなってその後、勉強、読書、ジョギング、筋トレ、散歩、片づけ、仕事などが15分続いた、30分続いたというのは、よくあることですし、それを狙っています。

もし、10秒アクションがうまく機能しなかったら、たった10秒ですから、すぐに別の方法を試すことができます。せっかく仮決めしたのであれば、その仮決めを仮行動につなげていくために、ぜひ「10秒アクション」から始めてみてください。

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