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初対面でも「相手が本音を話してしまう」技術とは? コンサルタントの驚くべき“質問力”

2021年03月09日 公開
2023年02月21日 更新

遠藤功(シナ・コーポレーション代表取締役)

遠藤功「コンサルタントの質問力」

「コンサルタントの質問力」と聞くと、鋭いナイフの刃のようなイメージがあるかもしれない。しかし、数々の企業のコンサルティングで実績を上げてきた遠藤功氏は、雑談のような雰囲気の中でこそ、貴重な情報を得られると言う。コンサルタントに限らず、すべてのビジネスパーソンにとって必要な質問力とは?

本稿では会話の肝である「雑談」を用いて初対面の方と信頼を築き、価値ある本音を引き出すために心がけたいポイントを具体的にアドバイスしている。

※本稿は『THE21』2021年4月号より一部抜粋・編集したものです。

取材・構成:林加愛

 

データ分析では顧客の悩みは見えてこない

――数多くの企業に対して経営力や組織力を向上させるための提言を行ない、実現させてきた遠藤功氏。「コンサルタントにとって、質問力はコアスキルの一つである」と断言する。

「有能なコンサルタントは質問の達人です。コンサルティングは、クライアントに問いかけ、引き出した答えから仮説を立て、提言につなげることの繰り返し。質問の精度が高いほど、提言のクオリティが上がります」

――コンサルタントにとって重要な能力というと、数字やデータの分析力をイメージしがちだ。しかし実際は、分析力と質問力の両方の能力が高くなければ、優れたコンサルタントにはなれないという。

「データはすべて過去の結果を表したものです。現在を表すものではないし、ましてや未来を示すものでもありません。データを分析しても、現在や未来を知ることはできないのです。

そこで必要となるのが、質問力。経営トップが抱く思い、中間管理職が抱えている悩み、現場の人々の困りごと。そうした現在の状況は、質問によってしかわかりません」

――また、質問は1次情報を得る唯一の手段であると、遠藤氏は強調する。

「1次情報とは、すなわち、当事者が発した生の声です。ネットや新聞など、メディアに出てくるものは、すべて2次、3次情報。また聞きであり、加工を経たものであり、時には捏造された情報さえあります。それらの『死んだ情報』を1万件かき集めても、1件の生の声の価値にはおよびません」

 

質問を「する側」こそ相手に試されている

――コンサルタントが行なうインタビューには、二つの種類がある。クライアント企業の人たちに対して行なう「クライアントインタビュー」と、その企業の状況や課題を把握すべく、取引先や競合企業、消費者などから情報を得る「フィールドインタビュー」だ。

「クライアントインタビューの目的は『深く』知ること。『深層インタビュー』とも呼びます。ネット検索でわかるような表層的な情報ではなく、さらに奥にあるものを見極めるために、当事者に直接問いかける。それも、通り一遍の聞き方ではなく、本音を掬い取れる対話でなくてはなりません」

――本音を聞き出すためには、相手との関係性が重要だ。信頼を得られなければ、本音で答えてもらうことができない。

「信頼を得るためにも、質問力が重要です。事前に調べればわかることやピントがズレたことを聞くと、不信感を持たれ、『デキない人』という烙印を押されます。すると、本音で答えてくれませんし、あとでたとえ良い提言をしたとしても、受け入れてもらえません。

逆に、良い質問をすれば、相手との信頼関係の基盤を作れます。『よく調べている』『良い視点を持っている』と相手に感じてもらえれば、本音で答えてくれるし、提言も『この人が言うことなら』と受け入れてもらえます。

質問一つが関係を構築することにも破壊することにもなるのですから、恐いですね。質問をする側こそ、実は、相手に試されているのです」

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