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“コンテンツづくり”に悩む人が、「ラジオCM」に耳を澄ますべき理由

2021年03月04日 公開
2023年02月21日 更新

鎮目博道(映像プロデューサー)

ラジオ

ラジオCMは「わかりやすさ」が命

では、なぜラジオのCMが、初心者が構成の勉強をするのに適しているのか、その理由を説明しておきましょう。

一言で言えば、ラジオCMは「わかりやすさ」が命だからです。なぜかわりやすさが命なのかというと、そのひとつの大きな理由は、ラジオを聴いている人の多くは車を運転しているドライバーや、お店などで仕事をしている人たちだと想定されているからです。

ラジオだけをじっと聴いている人も、もちろんいるはずなのですが、ラジオ局は長年の聴取率調査などに基づいて、お客さんの大部分が「何か仕事をしながら聴いている人」であるということを想定しています。まあ、確かにほとんどの人が持っているラジオは、カーラジオくらいですよね。

となると、「運転しながら」がメインの聴取者になりますから、ややこしい内容のものは聴いてくれません。運転の邪魔になります。だからラジオの番組には音楽中心のものが多い、ということも言えるのですが、とにかく「パッと聴いて印象に残るCM」でないとダメなのです。

そして、「わかりやすさが命」であるもうひとつの大きな理由として挙げられるのは、「映像がないこと」です。当然ですが、ラジオには音声しかなく、ビジュアルはついていません。

ラジオCMは、耳に入ってくる情報だけで、商品を思い出させ、その商品の良さを訴えなければなりません。

耳だけに、いろんな情報を一度に伝える必要があるわけです。商品のビジュアルは、聴取者に「想像させる」必要があります。

例えばビールのCMだったとしたら、そのビールのパッケージ、冷たくて美味しそうなジョッキから、それを飲んで「プハーッ」となっている気持ちよさそうな自分の姿まで、様々なものを頭に思い浮かべてもらう必要があるのです。

そのためには、CM自体の「コンテンツとしての構成」は、わかりやすくなければなりません。単純な構造で、しかし印象に残るような「面白いCM」にしないとダメです。だから、テレビCMよりも、制作者は構成に比重をおいて「構成一本」で頑張るのです。

そして、「わかりやすさが命」以外にも、ラジオCMが構成を勉強する初心者に向いている理由があります。それはその「長さ」です。

初心者が構成について考えながらコンテンツを見たり聞いたりする時に、あまりに長いと複雑すぎて頭がこんがらがってしまいます。連続ドラマや映画は、そういう意味ではハードルが高いと思います。

だから、できるだけ短いコンテンツのほうが、構成がシンプルなので向いているわけですが、これがテレビCMとなると、今度は少し短すぎるのです。

ご存知と思いますが、テレビCMは基本的に15秒か30秒の2種類で、ほとんどは15秒です。15秒だと、短すぎてそんなに構成に凝っている余裕はありません。ほぼ「一発勝負」の「瞬間芸」です。

それに比べ、ラジオCMは基本的に5秒・20秒・40秒・60秒のどれかで、短い20秒が多いのですが、60秒などの長めのものもあります。この「長め」のラジオCMは、結構ストーリーもあって、構成に凝っています。

このくらいのCMが、単純かつ面白く、構成にやや凝っていて、構成というものを意識するのにまさに「ぴったり」だと思うのです。

なのでぜひあなたも、次のドライブの際にでも、ラジオCMで「構成デビュー」を飾ってみてください。

 

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