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「女性学がようやく市民権を得た…」 東大に転職で変わった“教授人生”



2021年03月15日 公開

上野千鶴子(東京大学名誉教授)

上野千鶴子(東京大学名誉教授)
写真:清水梅子

研究者として日本の女性学をリードしてきた上野千鶴子氏。一般向けのベストセラーも数多く手がけ、また、社会活動家としても活躍を続けている。2019年の東大入学式の祝辞も大きな話題になった上野氏の、人生の転機とは?(取材・構成:塚田有香)

 

京都に愛着がありながら転職を決意した理由

転機はたくさんありましたが、キャリアについて言えば、1993年に、44歳で東京大学に赴任したことが大きかったですね。当時は学問の世界で女性学やジェンダー研究に対するニーズが高まっていました。それで東大からお声がかかったのです。

それまで私は、学生時代からずっと京都で暮らし、京都の短大や私大で教壇に立ってきたので、大好きな土地を離れたくないという気持ちがありました。

本当は自宅から一番近かったから「京都大学が私を雇ってくれないかな」と淡い期待を抱いていたのですが、現実には可能性はゼロ。なぜなら、京大生だったときに学生運動に参加し、大学に向かって石を投げたから。そんな人間を雇うはずがありません。

東京へ行くことを迷っていた私を後押ししてくれたのは、師匠と仰ぐ人物からの「嫌ならいつでも辞められる。辞めても誰からも恨まれない職場だから」という言葉でした。後釜を狙っている人は山のようにいるから、私が辞めて喜ぶ人はいても、恨む人はいない。「なるほどな」と納得しました。

加えて、当時勤めていたのが経営基盤の弱い新設の四大だったことも、転職を決断する理由になりました。既に少子化が進行し、各地で大学の統廃合が始まっていたので、「うちの大学も危ない」と考えたのです。

将来なくなる可能性がある職場から、日本で最も倒産の可能性が低い職場に移ることは、労働者として当然の選択です。

転職して驚いたのは、想像をはるかに超える「東大ブランド」の強さ。その効果で、仕事の幅が格段に広がりました。東大ブランドの威力を最も実感したのは、各地の教育委員会から講演を依頼されるようになったことです。

私は一般向けの軟派な本も出していたので、世間から「下ネタ系の札付きフェミニスト」と認識されていました。そんな私が教育委員会から仕事を依頼される。いわば「札付き」が「お墨付き」に変わったわけですから、東大の威光はすごいものだと仰天しました。

教える環境も大きく変わりました。

私の東大でのポジションは、「性と世代(ジェンダー&ジェネレーション)」を専門とする教員。ジェンダーの看板を掲げて、このテーマについて正面からまともに授業をするのは初めてでした。

日本のほとんどの大学では、「教育」と「研究」が一致しません。教育サービス業者として、自分の研究とは別に、学生の教育を行なっているのです。私も前の大学では「社会調査」の担当でした。

しかし東大では、自分が研究していることを、そのまま学生に教えられます。

大学院生も受け持つので、私の研究室を選ぶ学生たちは、将来を私に託したことになります。これは大変やりがいがありましたし、同じ専門領域で競い合う未来のライバルを育てるつもりで指導してきました。

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