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81プロデュース「声優を発掘・育成し、その活躍の場を作る。その繰り返しです」



2021年04月07日 公開

【経営トップに聞く 第46回】南沢道義(81プロデュース社長)

自前のスタジオを作ったことが会社の転機に

――確かに、声優のマネジメントという枠を超えていますね。起業した当初のスタッフは何人だったのでしょうか?

【南沢】3人です。

――それは大変だったのでは?

【南沢】1日のうちに1人でいくつもの職種を担当しました。付き人もやり、マネージャーもADもやり、企画や構成、ディレクターもプロデューサーもやって、イベンターも社長もやる。何役やってたんでしょうね(笑)。

――ビジネスとしては、創業当初から成立していた?

【南沢】成立していました。今のように配信はないし、声優に関連するグッズを販売するビジネスもなかったのですが、舞台やコンサートを観てくれるお客さんがたくさんいました。高額なチケット料金を払って来てくれるファンの人たち。「お客様は神様です」。本当にそう思いました。

――声優の人気が出てきた波に乗った?

【南沢】そう言うとビジネスセンスがあったかのように聞こえますが、そういうことよりも、40年経った今から振り返っても思いますが、好きなことを一生懸命やってきたという気がします。頑張って続けているうちに、時代が迎えに来てくれました。声優にこんなにスポットが当たるようになるとは思っていませんでしたから。先輩方にも今の時代を見せてあげたかったなと思います。

――創業当初からNHKの仕事もあったようですが。

【南沢】起業する前、仕事でNHKに出入りしていると、番組のプロデューサーから「NHKでアニメーションを作ることになった」という話を聞きました。それが、伝説のスタッフが集結した『アニメーション紀行 マルコ・ポーロの冒険』(1979~1980年放送)です。この作品に、キャスティングプロデューサーとして参加させていただきました。アニメーションのキャスティングプロデューサーをしたのは、それが初めてです。すべてNHK局内で制作していたので、そのときにアニメーションの作り方を学びましたね。

 それが成功して、起業後も『太陽の子エステバン』(1982~1983年放送)など、NHKの仕事をさせていただきました。

――キャスティングプロデューサーということは、自社に所属する声優以外もキャスティングするわけですよね。

【南沢】それで業界に顔が売れたところもあるかもしれません(笑)。『マルコ・ポーロの冒険』には、NHKからの要望もあって、業界の至宝ばかりが出演しています。

 放送局や製作会社ではなく、声優事務所のマネージャーがキャスティングプロデューサーをやるというのは驚かれたかもしれませんが、私にとっては自然なことでした。冒頭で申し上げた通り、私が考えていたのは、モノ作りをして、声優を「プロデュース」することでしたから。

 今も、ありがたいことに、「南沢さんは業界のことを考えている」と言っていただくことがあります。本当の本音では、自社に所属しているキャストに売れてほしいという気持ちが強いですが、それだけでは業界が成り立ちません。

――創業以降、経営は順調だった?

【南沢】無我夢中という感じでしたが、おかげさまで赤字になったこともあまりなく、微増微増で伸びてくることができました。

 番組やイベントの制作を請け負う仕事も多いので、与えられた予算の中で制作をすれば利益が出るということもあると思います。

――とはいえ、請負の仕事も競合他社は多いですよね。

【南沢】言われてみればそうですね(笑)。お金をいただいて働いたというより、楽しいことをスポンサーの皆さんと共有してきた感覚です。スポンサーには才能豊かな素晴らしい方々が多くいます。一緒に仕事ができるのは、本当に幸せですよね。

――会社としての転機となった出来事はありましたか?

【南沢】テレビ局には立派なスタジオがあって、「ここで仕事をしていれば将来がある」という気持ちになれると思うのですが、アニメーションのセリフ収録スタジオは、狭かったり、老朽化したビルの中にあったり、システムが古かったりと、劣悪な環境で、閉塞感を強く感じました。

 そこで私は、アニメーションにせよ、外国映画にせよ、会社として音響・音声制作の仕事をきちんと受けるには、しっかりとした出演者はもちろん、上質なエンジニアとシステムも必要だと感じるようになりました。

 とはいえ、自前でスタジオを作れるほどのお金はなかったのですが、30代後半の頃、ある銀行の支店長と知り合ったのが転機になりました。融資をしてくれることになったのです。

 今でこそ、テープ収録はなくなり、データ収録が当たり前になりましたが、これを日本で初めて採用したのが当社の関連会社である〔株〕HALF H・P STUDIOです。フェアライトというオーストラリアの会社と組んで実現しました。閉塞感を打破するには、時代の半歩先を行かなければなりません。当時の若い技術たちとの合い言葉でした。

 出演者についても、若い才能を発掘し、育成しないと、枯渇するということを、30歳を過ぎた頃から感じていました。そこで、81アクターズスタジオを始めました。その1期生が、50歳を過ぎて、今も一線で活躍しているのは嬉しいですね。

 全国から81アクターズスタジオを目指して大勢の方がチャレンジをしてくれているのを見ると、あの頃に考えて、手探りで始めたことが、今日につながっていると感じます。

――人材の発掘、育成については、どんなことを重視しているのですか?

【南沢】映像の役者は、多少滑舌が悪くても、芝居の力を別の存在感で発揮できます。しかし、声優は滑舌が生命線です。滑舌が絶対的な最低条件です。

 それに加えて、腹式呼吸や早口言葉、肉体訓練に声楽など、必要不可欠な様々なトレーニングをします。声を出すためにはダンスも必要です。

 81アクターズスタジオのカリキュラムの中には空手や日舞もあるのですが、それは所作を覚えるためです。声優は画面を観てアテレコをすればいいものではありません。声優は表現者であり、役者です。兼ね備えた人が生き残っています。

 私が若い頃にプロデュースした舞台で一生懸命に芝居をしていた声優たちも、その経験が今に活きています。芝居をすることによって、心身共に成長します。アニメーションが忙しいから芝居をしないという声優はいませんでしたね。

 若い頃にどういう先生に出会って、どういうレッスンを受けるかが、その人にとってすごく大事だという気がします。

 そして、声優が育ったら、仕事をしてもらう場所を私たちが探し、作る。その繰り返しです。

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まだまだ新しいことをやる。時代は必ず迎えに来てくれる >



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