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世界旅行歴15年の旅人が語る「フリーランスの夢と現実」

2021年03月29日 公開
2023年03月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(61)石澤義裕(デザイナー)

最初のハードル「性格の悪い担当」

また、「嫌な上司や同僚がいないとせいせいする」と言ったフリーランス志望の旅人がいました。

確かにフリーになると、人間関係の煩わしさが減ります。

でも、クライアントと“浅く広く”付き合うため、仕事上の登場人物はさほど減りません。

想像してほしいのですが、フリーランスになってクライアントを探すとしましょう。

某社に、好人物の担当者がいるとします。

当然、その人の仕事をしたいですよね?

でもその人は人気者だから、すでに取り巻きのフリーランスがたくさんいて、付け入る隙がありません。

どこの馬の骨だかわからない一見さんに仕事を出す、余裕も必要もないのです。

一方、性格の悪い担当者がいます。

無理を言ったり、威張ったりする人。どこの会社にも必ずいます。

彼の仕事をしたフリーランスは皆、すぐに喧嘩をして去ってゆきます。

だからいつも、フリーランスを募集中!です。

この性悪担当者が、新人フリーランスの登竜門です。

彼の仕事をすると、噂通りに嫌な思いをして、二度とやるもんか!って啖呵を切りたくなりますが、我慢です。

ここは我慢。

じっと我慢。

嫌味のひとつやふたつをいただきながら、2回目の仕事を請けます。

前回同様に嫌な目に遭いますが、一度通った道と思えば、多少ダメージは減ります。

3回目は、やられてばかりじゃありません。

傾向と対策を練ってコトにあたり、極力トラブルを避けます。

4度目以降ともなると、少しは気心が知れるというものです。嫌味も以前ほど気になりません。過去に苦労を重ねたぶん、スムーズに仕事が進みます。というかこれから先は、今までの苦労が水の泡にならぬよう、流した涙のぶんだけ、仕事で回収するのです。

辛苦をともにしてはじめて性悪氏は、

「(俺と上手くやってくなんて)こいつはできる奴だぞ」

と信頼してくれ、ほかの担当者を紹介してくれます。

性悪氏はその性格ゆえに友達が少ないから、やたらと自慢したがるものなのです。いい宣伝マンになってくれます。

「性悪氏の仕事をこなす」というのは、大いなる実績です。

この噂が好人物の耳にも届いたら、こっちのモノ。

好人物の仕事の多くは業界の注目の的だったりするものだから、同業他社の仕事が舞い込むという筋書きです。

つまり、上司や同僚より評判の悪い人と付き合ってはじめて、食べていけるようになるのです。

フリーランスになると面倒な人間関係を避けられるなんて、それは「フリーランスで食ったことのない人」の妄想です。すぐに捨てるように!

というわけで、浅く広くお客さんと付き合っていたから、そのネタで15年間も海外で飯が食えてるんじゃないかと思うのです、ボクは。

と、来週、件の旅人とバーベキューをするのですが、説教くさいことを言わないようにしなくちゃ。

やっとできた友達なのに、嫌われてしまう。

モロッコの大学生

モロッコの大学生。彼らはたぶん、フリーランスより就職希望ではないだろうか。公務員が人気です。

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