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居場所を失った“50代会社員”が、これ以上「孤立」しないために出来ること

2021年04月08日 公開
2022年10月06日 更新

松本利明(人事・戦略コンサルタント/HRストラテジー代表)

松本利明

「大切にされる自分」はどんな人物か

解決の第一歩は、自分の「感情」を掘り下げることです。

この世代は、とかく理屈で考えがちです。原因を追究してあれこれ試しても、その一生懸命さはむしろ逆効果です。

中高年を対象としたライフプラン研修でも、この手の間違ったアプローチが多く見受けられます。これまでの人生の良いとき・悪いときをグラフに書いて、良いときの共通要素を抽出させる、といった手法はその典型。

これは前述の通り、今後の時代に適合するとは限りませんし、なにより「頭でっかち」です。

ここで行なうべきは、自分の感情が真に望むこと――「どう扱ってもらいたいのか」を見極めることです。

この手法には順番があります。まず、自分が日々どんな場面で傷つき、どんなことを気にしているかを考えます。周囲の挨拶がぞんざいなときなのか、あるいはボーナスが下がったことを気に病んでいるのか。 

次いで、そのことの何が問題なのか、そのまま続けば具体的にどんな悪いことが起こるのか、と掘り下げていきます。

挨拶されなくても、別にそれ以外の何かが起きるわけではありません。問題は「自尊心が傷つく」ということのみでしょう。自分が尊敬されていないと感じている、つまり尊敬されたいと感じている。自分の掛け値なしの本音がこうして明らかになります。

そうなると、「どうすれば敬意を持って関わってもらえるか」が焦点になります。この段階では「敬意を持たれるような自分」をイメージするのがコツです。

その自分は、決して虚勢を張って自分を大きく見せたり、好かれようとして親切ごかしにふるまったりはしないはずです。それがわかれば、余計なことをするほど嫌われる、とリアルに実感できるでしょう。

孤独なときこそ悪あがきしてはいけないこと、「何かあれば相談して」とひと言言えば、あとは何もしないのがベストだということ。

そこに得心が行けば、悪循環はリセットされます。

 

即効性のある処方箋は「ジム通い」

もっと単純で即効性の高い解決策もあります。居場所がなければ、新たに居場所を見つけてしまえばいいのです。

一番簡単な方法は、「ジム」に通うことです。孤独から脱した方々から話を聞くと、ジム通いというキーワードが実に頻繁に出てきます。

そのポイントは、「平等」です。ジムでは職場のような、職階や年齢や能力による上下関係は生じません。初心者と習熟者の違いはありますが、それは続ければ解決する話。筋トレには運動神経の良し悪しも関係ありません。頑張れば必ず結果が出ることも、仕事との大きな違いですね(笑)。

常連同士で顔見知りになり、シャワー室などで軽くおしゃべりする、といった緩やかな関係性も生まれ、しかも身体が日々変わっていくので充実感が得られます。

交流があり、かつ向上できる場所。そんな拠点ができれば心に余裕が出ます。職場での振舞いにもあくせくした様子が消えて、周囲の印象も変わってきます。手頃な会費も魅力です。

一方、異動や転職によって、新たな居場所を得る人もいます。ここでも、振舞い方を間違えると、今まで以上に孤立してしまう危険もあります。「前の部署ではこうだった」「前の会社のやり方と違う」を頻発すれば、確実に周囲に嫌われます。

この行動は、前職が華やかだった人のマウンティングであるケースもありますが、まったく悪気がないことも多いもの。人は物事を相対的に比較して理解を得る生物なので、前の仕事との差異を確認したい気持ちが働くのです。

しかし、自分が知っているやり方にこだわるような言い方は、悪印象。「前はこうだった」は心の中に留めて、「ここはどうしたらいいですか?」とシンプルに聞くのがベストです。

 

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