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良いコーチが「命令しないで」指導する理由

2021年04月15日 公開

為末大(Deportare Partners代表/元陸上選手)

為末大

トップアスリートとして輝かしい成績を残し、現在はビジネスの場でも活躍している為末大氏によれば、「『質問』は競技力向上のうえで重要なスキルだった」「『質問』とは自分が知りたいことを聞くだけの行為ではない」と言う。

現役時代はコーチをほとんどつけず、専門分野にかかわらずさまざまな人に質問をしていたという為末氏に、自分を成長させる質問力について聞いた。

※本稿は『THE21』4月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

偶然拾った情報こそ示唆に富んでいる

為末氏は、相手が話しやすい質問の仕方をするのに留まらず、相手が話したいことを読み取って、それについて質問をすることもあるという。為末氏にとって、質問とは、自分が知りたいことを聞くだけの行為ではないのだ。

「相手の関心事や考え方から推測して、楽しく話してくれそうな質問を投げかけると、会話が弾んで、こちらも楽しい。結局のところ、僕はコミュニケーション全般が好きな人間なのでしょう。質問はあくまでその一環という位置づけです」

得たい情報を明確に決めて、その答えを取りに行くのが質問だと思っている人も多いだろうが、為末氏の質問は、そうではないことが多いそうだ。

「そもそも、ダイレクトに役立つ情報は、検索すれば得られることがほとんどです。僕の現役時代は、インターネットは今ほど普及してはいませんでしたが、必要な情報のほとんどは本で調べれば事足りました。

僕が質問で求めているのは、狙って取りに行くことができない偶然の発見です。生身の人から返ってくるランダムな回答のほうが、僕には刺激的なんです」

目的を持って質問をする場でさえ、偶然出てきた話のほうが強く印象に残るという。

「クロアチアのドブロブニクという街に、現地の陸上クラブの話を聞きに行ったことがあるのですが、印象に残っているのは、話を聞いた方が使う『私たち』という単語の意味が何度も変わったことです。

あるときは『クロアチア人』であり、あるときは『ボスニア人も含めた、紛争で爆撃を受けた住民』であり、あるときは『同じ宗教の人たち』を意味していたんです。この街が抱えている複雑性を、思わぬ形で知ることができました」

 

情報はすべて抽象化で自分事にできる

偶然に得られた様々な情報の中には、自分とは無関係に思えるものも多くある。しかし、「刺激的だと感じる話には、必ず自分に影響を与える要素がある」という。

「立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんと話をさせていただいたとき、歴史上、ほとんどの大帝国は長持ちしなかったという話をお聞きしました。

『では、長持ちした大帝国は、何が違ったのか』と質問をすると、答えは『多様性』でした。下層の人たちにも出世のチャンスがないと、すぐに崩壊してしまうのだそうです。

現代社会に当てはめても示唆的な話ですし、競技者に当てはめると、『チーム内の多様性』というテーマが見えてきます。

長年、不動のエースがいるチームは、果たして盤石か。自分が作るチームには、どのようなシステムを設けるべきか。そうしたことを考えるヒントになりました」

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