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物語コーポレーション「コロナ禍の影響が少なかった理由の本質は『郊外』『焼肉』という業態特性だけではない」



2021年05月07日 公開

【経営トップに聞く 第47回】加藤央之(物語コーポレーション社長)

物語コーポレーション

地域一番店になるための改善を、日々、続ける

――2020年6月期の第4四半期の次の四半期には、もう売上が回復しています。その要因は?

【加藤】郊外型の業態のほうが駅前・繁華街型よりもコロナ禍の影響が少ないという傾向はあると思います。

通勤をするビジネスパーソン自体が減り、会社の仲間とお酒を飲む機会も接待の機会も大きく減ったことに比べれば、日曜日に家族と外食を楽しむ人は、それほど大きくは減っていませんから。ただ、郊外にも、混んでいる店もあれば、空いている店もあります。

「焼肉はコロナ禍でも調子がいい」と言われることもありますが、焼肉業界のデータを見ると、すべての焼肉店の調子がいいわけでもありません。

結局、人は地域一番店に集まってくるのです。外食の機会が減ったことで、その少ない外食の機会を「せっかくなら、あのお店で楽しみたい」と考えるお客様が増えています。

単純に「せっかくなら焼肉にしよう」という人もいると思いますが、いくつもある店の中でも「せっかくなら」と選ばれる地域一番店にお客様は集まります。

つまり、お客様の期待に応えられるお店かどうかが本質なのです。私たちはチェーン店ではありますが、ドミナント出店よりも、この地域一番店を目指してきました。

――そのために、どのようなことをしているのでしょうか?

【加藤】地域一番店になるために最も重要なことは、「改善力」だと考えています。

新たな業態をゼロから生み出す開発力も重要ですが、業態は開発しても他社に真似されます。例えば、回転寿司はホールの人員を減らすことで寿司を安く提供できるようにした画期的な業態でしたが、すぐに数多くの企業が追随しました。

一方、「お客様にはわかりにくいのではないか」「今の味では尖りすぎているのではないか」というようなことを、常にお客様の心に寄り添って改善し続けることは、なかなか真似ができません。

そういった改善を、お客様が離れる前に、売上が落ちる前に、行なうことが重要だと考えています

その改善力はどこから生まれるのかと言えば、それは人財力です。

当社では社員が自分を表現することを重視しています。自己実現を目指している人は、自信を持って表現するために、自然と勉強をするようになります。

例えば、世の中のラーメンをたくさん食べることで、自社のラーメンのチャーシューが厚切りなのか、薄切りなのか、自信を持って言えるようになります。そして、厚切りのメリットと、薄切りのメリットを考えられるようになり、自分の考えができてきます。

さらに、多様な人たちが意見を出すことで、1人だけの偏った考えから皆の感覚に近いところへと寄り添うようになっていく。

つまり、自己実現を目指す多様な人財を集め、思ったことを自由に言い合えるようにすることで、改善を続けることができ、それによってお客様に受け入れられる、地域一番店になることができるのです。

そして、コロナ禍によって、地域一番店にお客様が集まる傾向がより強くなった、ということです。

ただ、地域一番店であることに胡坐をかいていると、すぐにお客様とのズレが生じます。メニューも、タレの味も、外装も、日々見直して改善を続けなければならないのです。

――日々の改善は、どのようにして行なっているのですか?

【加藤】仕組みとしては、毎週月曜日と火曜日に業態ごとの「業態改善会議」を行なっています。各業態とも、少なくとも2週間に1回は順番が回って来て、議題を出さなければなりません。

他にも、全社で毎月、「何でも提案実行委員会」というものも行なっています。パートナーを含めた全従業員から改善提案を募集し、私や各部署の責任者、事業部長などが答えます。ひと月に100件以上届き、そのすべてに対して、理由とともに、「やる」「やらない」を決めていきます。

私が実際に店に行ってみれば、改善しなければならない項目はいくらでも見つかります。それは気づいたその場で伝えます。

大切なのは、「自分だったらこうする」という意見が持てる人財と、忖度することなく思ったことを言える風土を育てることです。

普通は問題が顕在化してから議論をするのでしょうが、私が意識しているのは、顕在化する前に議論をすること。そのために、最近、「全社開発会議」と「危険予測会議」も始めました。

全社開発会議は、すべての部署の部門長が出席し、自部門が何をしているのかをプレゼンします。それに対して、他の部門長が自身のテリトリーを超えた「領空侵犯」をして、質問や提案をするのです。

危険予測会議には、「経営幹部だからこそ必死に危険予測をして提案せよ」「経営幹部だからこそお互いに領空侵犯して提案せよ」「経営幹部だからこそチャンスに目を向けて提案せよ」という3つのコンセプトがあります。

他部門に口を出す領空侵犯は、普通はマナー違反とされますが、社長の私が「コンセプトは領空侵犯だ」と言い切ることで、マナー違反でなくなります。領空侵犯こそが、多様性を受け入れるということです。会社を本質的に強くするために必要なことです。

領空侵犯があると、部門長は他部門に対して説明責任を果たさなければなりません。すると、深く考えて意思決定するようになりますし、自身も磨かれていきます。

――「焼肉きんぐ」には、客席を回って肉の焼き方を教えてくれる「焼肉ポリス」が配置されていますが、これも日々の改善の中から生まれたサービスなのですか?

【加藤】地域一番店になるための取り組みの1つです。いくら美味しいお肉でも焼き方を間違えると美味しくない。美味しい状態でお客様に食べていただくために「おせっかい」をしようというところから生まれたサービスです。「焼肉ポリス」という名前は全社から公募して決めました。

当社はこの1月より、Serviという配膳ロボットを導入しました。その一番の目的は人件費削減や非接触化ではありません。

業務過多や人員不足のために「焼肉ポリス」を配置できていない店舗がありましたので、配膳と下げ膳の一部をロボットに任せることで、「焼肉ポリス」を配置するための人員を確保したいのです。

――マーケティング調査はしているのでしょうか?

【加藤】することはありますが、結局、自分たちで考えたことが合っているのかを確認するだけになるのです。

「お客様にどう思われているのか」をいくら調査しても、イノベーションは生まれません。それはベースとして、「自分たちの価値がきちんとお客様に伝わっているのか」という観点からCX(顧客体験価値)を考えなければなりません。

もし私たちが「価値がある」と思ってやっていることがお客様に伝わっていないのだとしたら、伝わっていないことに問題があります。

――伝わっているかどうかは、どのようにして判断しているのでしょう?

【加藤】最近、「CX・EX委員会」というものを立ち上げて、お客様に提供している価値や従業員向けの発信がきちんと伝わっているかどうかを検討することも始めました。

飲食業界以外から中途入社した社員も含め、多様な社員が委員を務めています。そのメンバーたちと実際に店に行って思ったことを互いに言い合うのが基本です。

 

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