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副業の広がりは日本の生産性を上げるか? 日本型雇用はどうなるのか?



2021年05月17日 公開

ロバート・フェルドマン(経済学博士)×松村幸弥(シューマツワーカーCEO)

DXが進む中、必要なのは「学び直し」だが……

【フェルドマン】メンバーシップ型からジョブ型へと雇用が変わると言われていますが、ITが進化すると、ジョブ型では仕事が進まない場面が増えるでしょう。自分のジョブだけをするのではなく、それを他の仕事とつなげることが重要になるからです。

「これさえすればいい」という決まったジョブは、コンピューターがするようになって、人間の仕事としてはなくなっていきます。税理士の仕事もそうです。

 私は日本と米国の両方に納税していて、以前は、ある会社に勤めている、日本に住んでいるインド人に米国への納税業務を任せていました。ところが、ある年、彼が急に退職した。それ以降は、同じ会社にお願いしていますが、ソフトウェアに必要な情報を入力するだけです。たまに話す必要があるときは、インドに住んでいるインド人とやり取りをしています。つまり、税理士の仕事もほとんどはコンピューターができるし、どうしても人間がしなければならないことも「リモートインテリジェンス」で済むということです。

 人間にしかできないのは、繰り返しではない仕事です。手を使う仕事でも、頭を使う仕事でも、同じです。

 では、どんなスキルが必要かと言えば、社交性です。

【松村】DXが進むと、機械に代替される仕事は失われていくということですね。機械に代替されないためには、何が必要でしょうか?

【フェルドマン】1つは学び直しだと思います。常に学び続けることが大事です。

 私が教えている東京理科大学大学院のMOT(技術経営専攻)も、学生の平均年齢は43歳です。皆、次のステップを考えて学び直しをしているのです。

【松村】シニア層の学び直しは、大企業にとっても緊急性の高い課題です。

 大企業からシニア層の社員に副業をさせてほしいという相談が来ることが、たまにあります。でも、どんなスキルがあるのかを聞くと、「明確なものは……」と言うんですね。それではご紹介が難しい。

【フェルドマン】技術の進歩によって、企業は終身雇用制を維持できなくなってきています。

 労働者の生産性は、入社時点ではほとんどゼロで、その後、上がっていき、ある時にピークを迎えて、それからは下がっていきます。一方、賃金は年功序列で上がり続けます。

 技術の進歩は生産性のピークを早めることになり、賃金が生産性を上回る期間が長くなってきています。そのため、企業は終身雇用を維持できなくなってきているのです。

 学び直しをすると、年齢が高くなっても、生産性が長期的に上がっていきます。副業も一種の学び直しになります。

 企業が社員を教育する場合、今の業務に直結する教育であれば経費として計上できますが、そうでなければ経費になりません。今の仕事がコンピューターによってなくなるから、まったく新しいスキルを学ばせたいと思っても、難しいわけです。

 国も、失業した人が再就職できるように学び直しをすることを、福祉の対象にしていません。これは日本に限らず、諸外国でも同じです。

 失業した人が再就職のために学び直しをするためには、前提として、ベーシックインカムが必要だと、私は考えています。住む場所を失ったり、十分に食べられなかったりすると、学び直しもできませんし、再就職することが難しくなりますから。

 ベーシックインカムがあると働かない人が増えると言う人がいますが、世界各地で行なわれている実験の結果を見ると、労働時間を減らすのは母子家庭の母親や学生だけです。

 生活保護は、国民年金保険料が免除されたり、医療費を支払わなくて済んだりして、働こうというインセンティブが働きにくい仕組みになっていると思います。

 また、終身雇用で守られているのは、実は日本の労働市場の一部の人たちに過ぎません。残りは、契約社員などの「アウトサイダー」です。今の労働習慣は、「インサイダー」の正社員は得をするけれども、「アウトサイダー」は損をするようにできています。このアウトサイダーに交渉力がないというのも問題です。

 副業をすることでスキルを身につけて、辞められると困る人材になると、本業での交渉力を強くすることにもなります。

【松村】私の周りでは、「本業単独で1000万」ではなく、本業と副業のポートフォリオをうまく組み合わせることで1000万を稼ぐような人も増えています。まだ一部に限られていますが、こういう人たちを増やしていきたいですね。

【フェルドマン】松村社長は、副業をしている人たちは職を失う危機感を持っていると感じますか?

【松村】いえ、今副業をしている人たちは、リスクに駆られてやっているというよりも、キャリア開発やスキルを活かした社会貢献など、ポジティブな理由でやっている人が多いですね。

 むしろ副業で働く人を必要としているのは企業側なのですが、それに気づかず、正社員を求めている企業が多い。そこで、副業について啓蒙活動をしているところです。

【フェルドマン】障壁になっているのは何ですか?

【松村】副業の人は信用できない、オフィスに来てもらわないと嫌だ、といった偏見です。

【フェルドマン】どうやって説得しているのですか?

【松村】具体的に業務フローやタスクのどの部分が足りていないのかを聞いて、「こことここは副業でできます。実際に事例があります」と見せています。そして、1度試してもらって、それがうまくいくと、「副業でもいいじゃないか」と頭が切り替わります。

 まずはプロフィットセンターのウェブマーケターから始めて、成果が出るとコストセンターのエンジニアなども採用する、というケースが多いです。

 これを4年間ずっとやってきていると、「副業でもいいじゃないか」という頭になった方が友人・知人に話をしてくれるようになり、連鎖が始まりました。

 コロナ禍でテレワークのインフラが普及したことも、追い風になっています。

【フェルドマン】障壁は、経営者にあるのでしょうか? 人事部にあるのでしょうか?

【松村】副業人材・外部人材の活用には、事業部の外注費から予算を出していただいて、必ずしも人事部を経由していないケースが多いんです。経営者にアプローチをすると、現場の方を紹介していただけることも多いですね。人事部は正社員の採用だけを考えていて、副業や業務委託については管轄外だと考えている人も多いです。人事部が関わるようになれば、多様な働き方を実現した職場にいっそう近づいていくと思うのですが。

【フェルドマン】日本では総人口が減っていますが、労働人口がそれ以上に減っているので、1人当たりのGDPを維持するためには、これまで以上に生産性を上げる必要があります。そのために副業が貢献することを期待しています。



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