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定年後も「会社名」から名乗る人たちの悲哀…50代で備えておくべき“孤独力”

2021年06月02日 公開

保坂隆(精神科医)

 

学生時代の「同窓会」が新しいネットワークになる

勉強が「一人で」楽しめる力を高めるものだとすれば、「皆で」楽しむための人とのつながりは、どのように作っていくとよいのでしょうか。

50代から意識すると良いのは、仕事以外の人との出会いを大切にすることです。現役時代は仕事上のつきあいがメインかもしれませんが、退職後はいずれなくなっていきます。

肩書でつながっている人たちとの集まりにはできるだけ参加しない、年賀状の交換も止めるなど、仕事上の人間関係を整理していくと良いでしょう。

それによって生まれた時間と労力は、これからの人生を一緒に楽しめる人との出会いや親交に使うべき。それはスポーツクラブや地域の社会活動での出会いかもしれないし、社会人大学、講演会やセミナーなど学びの場で知り合う人かもしれません。

私がお勧めしたいのは、同窓会です。40代までは同窓会はそれほど多くありませんが、50代になると急に増えてきます。

40代は仕事が忙しくて人が集まりませんが、50代になると会社での役割も安定し、仕事を部下に任せることもできるし、家では子供が成長して、ひと安心できる時期だからでしょう。そんなときにふと、「高校で一緒だったあいつはどうしてるかな?」と昔のことが思い出されるのです。

私の場合、大学、高校、中学、小学校の同窓会が開かれ、出席しました。皆同じ心境になるのか、出席率は高かったですね。その後は、年に一度の同窓会に加えて、近くに住んでいる人たちだけで集まる機会も増えています。

彼らとは昔からの友達ですが、仕事関係ではないという意味では、新しいつながりです。このように、第二の人生に向けた新しいネットワークは、昔の友達から探すこともできるのです。

 

古い友人と会うことで「自分史」を完成させる

もう一つ、同窓会が良いのは、古い友人と会うことで、客観的に自分を見つめ直すことができることです。これを精神科用語で「現実検討」といいます。

人は、自分の過去については、少しだけ美化して記憶しているものです。例えば、「俺って走るの速かったよな」と言えば、「いや、お前はいつもビリだった」と友達が修正してくれます。50代の10年間は、そうやって客観的に過去を振り返りながら、「自分史」を完成させる期間なのだと思います。

と同時に、現実検討は60歳以降の人生を考えるいい機会にもなります。「そういえばお前、水彩画が上手だったよな」などと指摘され、昔好きだったことや、やりたかったことを思い出したりします。それが、学び直しや昔の夢の再チャレンジにつながるきっかけになるかもしれません。

定年後の人生に欠かせない人的ネットワークを築いたり、やりたいことを見つけたりするのに、同窓会を有効に活用してみてはいかがでしょうか。

 

人生にもリスク管理の考え方を取り入れよう

高野山大学大学院で密教学を学んだ私は、初期のがん患者さんの外来でも、「死ぬとはどういうことか」「死んだあと人間はどうなるのか」といった話をします。また、私の家族にも、「自分が死んだらこんな葬式にしてほしい」と伝えています。

こう言うと、「縁起でもない」と皆さんおっしゃいますが、「縁起でもないこと」を今のうちから考えておかないと、「リスク管理」にはなりません。

「リスク管理」と似た言葉に、「危機管理」があります。その違いを明確にしておくと、問題が起きる前から、最悪の事態にも対応できるように備えるのが「リスク管理」。一方、すでに起きてしまった問題に対して、状況の悪化を避けるために対応するのが「危機管理」です。

日本の過去の災害対応を見ると、危機管理はできても、リスク管理が十分でなかったことは明らかです。日本は「言霊の文化」なので、「縁起でもないこと」を考えたがらない傾向が強いのです。

しかし、このリスク管理の考え方は、人生においても重要です。「定年後は夫婦二人で仲良く暮らしたい」と多くの人は言いますが、現実問題として、どちらかが病気になったり、先に亡くなってしまうリスクを考えている人はどれだけいるでしょうか。「縁起でもない」から、考えていない人がほとんどでしょう。

一人になったときに「孤立しない」ためのリスク管理として、「一人で」と「皆で」の間を自由に行き来できる「孤独力」を50代のうちから高めておくことが大事なのです。

 

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