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王道のボイストレーニング「ゴルジャメソード」とは?

2021年06月14日 公開

武田梵声(ゴルジャメソード指導者)

プレゼンテーション

地球上に存在するほとんどすべてのボイストレーニングを研究対象にしてきた武田梵声氏は、ボイストレーニングには大きく分けて「19世紀的なボイストレーニング」と「17世紀的なボイストレーニング」の2つがあり、正しい方法は後者だと言う。それは裏声の地声のバランスを調整し、ビブラートやコブシのような装飾テクニックを用いて、喉を支える筋肉を効率よく鍛える訓練のことを指すという。

※本稿は、武田梵声著『ゴルジャメソード入門』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

 

ゴルジャメソードは「オールドイ​タリアンスクールメソードの核」

現代の様々なボイストレーニングの中で信用のおけるものは、いわゆる三大ボイストレーニング(17世紀的なボイストレーニング)だけです。

三大ボイストレーナーとは、フレデリック・フースラー、コーネリウス・リード、ハーバード・チェザリーです。ボイストレーニングをある程度学ばれた方なら、どこかで必ずこの三大ボイストレーナーの名前を聞いたことがあると思います。彼らはそれぞれ17世紀的なボイトレの継承者です。

中でもフースラーが生理学、解剖学、神経学、先史学、民謡学、身体論等などを学際的に学び、声や歌唱芸能を研究してまとめた発声学がフースラーメソードです。フースラーメソードおよびフースラーの著書『SINGEN』は、長らく「ボイトレの聖典」とされてきました。

漫画界における手塚治虫、ロック界におけるビートルズ、プロ野球の王・長嶋のような、その世界を象徴する最高峰の伝説的な名人のポジションが、ボイストレーニング界においてはフースラーだといえます。

そして、フースラーメソードのベースにもなっている17世紀的なボイストレーニングの源流が、「オールドイタリアンスクールメソード」です。というよりも、すべてのボイトレの源流はここにあります。

オールドイタリアンスクールメソードは、17世紀に作り出された「喉の潜在能力のすべてを引き出すことを可能としたメソード」です。このメソードにより、超人的な歌唱力を持つカストラートが生まれました。

中でもファリネッリとカッファレッリは突き抜けた歌唱力を持ち、文献や楽譜等を見る限り、現代の最高レベルの歌手を大きく突き放すほどのレベルであったことがうかがえます。

しかし、その後時が経つにつれてオールドイタリアンスクールメソードが様々に展開し、ボイトレとして複雑化していくうちに、ボイトレ自体が本来の目的や意味を失われていきました。

 

「プライマリーブレイク」を埋めるには

フースラーメソードやゴルジャメソードが代表するオールドイタリアンスクールメソードは、細かく学ぼうとすれば、様々な訓練をすることになりますが、その核となるものは、シ、レ、ミというたった3つの音のトレーニングになります。

この3つの音=「声のコア」を正しく発声できれば、声のほとんどすべての問題は解決します。なぜなら、裏声と地声は同等な力を持ったときに連結するという基本的な法則があります。

ところがシ、レ、ミの裏声は、大抵の人は極めて弱いため、訓練を積まないと地声と裏声のつなぎ目に裂け目が生まれ、声が裏返ってしまいます。これをプライマリーブレイク(原始の裂け目)といいます。

訓練をしなければプライマリーブレイクは埋まらないのですが、「ソ♯」あたりは裏声がある程度強いため、比較的初期の段階から裂け目がつながりやすくなります。ですから「ソ♯」あたりで地声と裏声をつなげば、見かけ上はハイトーンボーカルらしくなります。

ただし原始の裂け目である「シ」「レ」「ミ」が鍛えられていないと、いわば土台のない状態ですので、見かけ上の高い声は出ても不自由感を抱え、また不安定なテクニックとなります。

プロの歌い手の中にもこうした人はかなりいて、6~10年ほどで引退または全盛期の声を失ってしまう場合もあります。ですから、オールドイタリアンスクールメソードの時代には、シ、レ、ミの3つの音を鍛えることに重点が置かれていました。

ところが、ボイストレーニングはその後、大きなターニングポイントを迎えます。それが19世紀に起こったオペラの大規模化でした。

オペラの大規模化によりもたらされたのは、様々な局面における量的拡大でした。つまり、大きな舞台で大勢の観客たちを前にしてパフォーマンスをすることになったのです。そのため、大きな声量で歌う必要がありました。

そこで手っ取り早く声量を得るためのメソードとして腹式呼吸が登場し、オールドイタリアンスクールメソードの中核となるレジスター訓練を即席化したミックスボイスなどがもてはやされるようになりました。

喉を解放し、声のコアを正しく発声して美声を出すのではなく、とにかく遠くの観客へも大きな声で届けられるような、いわば即席に喉を鍛える方法が重視されたのです。その結果、ゴルジャメソードのシ、レ、ミの3つの音に光を当てるトレーニングが喪失されていったのです。

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