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コロナ禍の今こそ松下幸之助に学ぶ、「逆境の乗り越え方」

2021年06月21日 公開
2023年02月21日 更新

THE21編集部

 

過去にとらわれず、「日に新た」な気持ちで自己改革に取り組む

松下幸之助は「日に新た」という生き方も大切にしていた。「毎日毎日が新しい生まれ変わりであり、一瞬一瞬に新しい生命が躍動している」という生成発展の原理を表す言葉である。

事業においても、ある時点における成功に安住するのではなく、常に進歩を目指して努力し続けなければならない。というのも、世の中では自分たちの知らないところで技術も事業も絶えず進化し続けている。

そのため昨日まで常識だったことが、明日には時代遅れになっていることがある。この事実を意識して、決して停滞せず、いつでも「最善の上にも最善を」目指す姿勢を堅持しなければならないのである。

1961年頃、松下電器は得意先のトヨタ自動車からカーラジオの価格を20パーセント(※30パーセントとなっているものもあり)下げてほしいと依頼された。貿易自由化に対応するため、それだけのコストダウンがどうしても不可欠な状況だったからだ。

松下幸之助はその際、カーラジオのすべての部品のコストをゼロベースで見直すよう指示した。これが他の製品の原価も見直すきっかけとなり、松下電器は生産体制を大幅に改善することができた。過去の常識にしばられず、成功にもしばられない「日に新た」の姿勢が企業を大きく進化させたのである。

心で不況をつくらず、「不況またよし」と考えてやるべきことに取り組み、過去の常識にとらわれず、「日に新た」な気持ちで自己改革することで、逆境を乗り越え、どんな状況でも行き詰まらない歩み方ができるのではないだろうか。

 

セミナーの最後に、YouTubeのチャット欄に書き込まれた受講者の質問に渡邊講師が回答した。

【質疑応答】

(問1) 幸之助さんはどんな苦境を乗り越えられたのか教えてください。

(回答) 松下電器には「世界恐慌」「第二次世界大戦」「東京五輪後の不景気」という三つの危機があったといわれています。昭和初期の世界恐慌の際には、生産を半分に減らし、全店員が休日返上で販売に尽力したことで、在庫の山をさばき、一人も解雇せずに乗り切りました。このとき幸之助さんは経営のコツを体感したのかもしれませんね。

(問2) 幸之助さんの人づきあいの心がけについて教えてください。

(回答) 「人の話を聴く」「傾聴する」ということがまず挙げられます。相手の立場に関わらず、どんな人の意見もまったく同じ姿勢でじっと耳を傾けて聴いていたそうです。これには話している側が感動して、もっと話したい気持ちになったといいます。経営者や上司は「話す」ことを重視しがちですが、「聴く」こともそれ以上に重要なのではないでしょうか。

 

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