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同志のはずのビル・ゲイツと“絶縁”し…2度どん底を味わった人の「人生最大の転機」

2021年07月15日 公開

西和彦(アスキー創業者)

 

工学部だけの大学設立で尖った人材の輩出を目指す

この春、僕は65歳となり、東京大学を定年退官しました。僕は今が、実は人生最大の転機かもしれないと考えています。

これから僕がやろうとしているのは、大学の設立です。名称は日本先端大学。工学部だけの単科大学です。2023年度の開設を目指して準備を進めています。

僕はこの大学で、自分のアイデアを起業まで持っていける尖った人材を育てていきたい。かつて僕が経営者を務めていた頃のアスキーは、たくさんの人材を育てたことから「学校のような会社」と言われましたが、この大学には、多くの起業家を輩出する「会社のような学校」にしたいと考えています。

そのためには、日本だけでなく、海外からも教員を集めたい。幸い僕には、これまで培ってきた世界中の研究者や実業家とのネットワークがあります。

僕が「自分の手で大学を設立し、経営する」なんてことができるのは、間違いなく過去の2回の転機があったからです。

マイクロソフトの時代の僕は、米国の起業家たちの中で、世界を意識しながらビジネスに取り組むという経験をしました。エンジニアとしての高度な専門性も身につけました。

アスキーの社長時代には、会社を上場させ、上場企業を経営するという経験を積みました。また、ベンチャー起業への投資も手がけました。

そして大学では、学生たちに教えることと、大学運営に携わりました。

これらすべての経験があるからこそ、「日本には例がない、生きた理系教育を行なう大学を作り、経営する」という目標を追い求めることができるのです。

マイクロソフトにいたときに、ビルに楯突いたりせずに、黙って従っていれば、今ごろ僕は大金持ちになっていたかもしれない。でも、経営スキルを磨くことはできませんでした。同様に、アスキーを追い出された頃、それでも社長の地位に恋々としていたら、やはり今の僕はなかった。

色々とつらいことも多かったけれど、今振り返れば、それは「a blessing in disguise」です。

 

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