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「完成までのプロセス」が価値を生む...差別化できない時代に伸びる会社の共通点

2021年11月08日 公開
2023年02月21日 更新

THE21編集部

 

顧客の信頼を得る&業界の文化を変える

ヤネカベ

プロタイムズ総合研究所が運営する、外壁塗装などのサービス「ヤネカベ」でも、プロセスを顧客に見せている。

「外壁塗装の業界では、そもそも見積もりをした施工内容の明細をお客様に示すという文化がありません。ですから、原価を下げるために、塗料を希釈して使ったり、下塗りをしたあと、十分に乾かさずに上から中塗りをして人工(にんく)を減らしたりする業者もあります。

お客様は、表面さえ綺麗になっていれば、防水性などに問題があっても気づくことができません。さらに、このような手抜きと思われるようなことも、職人自身が手抜き工事だと気づいていない場合もあります」(同社代表・大友健右氏)

同社ではCADを使って、塗装をする面積を正確に計測。そこから必要な量の塗料や人工を計算して、見積もりを出している。

「私は不動産業界という他の業界から移ってきたので、見積もりの明細を出すのは当たり前だと思っていますが、この業界の人にとっては、やらないのが当たり前なんです。不動産業界でもルールと文化が対立して、文化が勝ってしまうのを目にしてきました。ところが、外壁塗装の業界にはルールすらありません」(大友氏)

2010年にサービスを開始したヤネカベの累計施工件数は、今年、2万件を突破。見積もりをした施工内容の詳細を見せるといった、顧客に安心してもらうために様々なサービスを提供したことで、顧客の信頼を得た結果だ。リピート率も高いという。

職人は業界の文化に染まっていない未経験者のみを雇って、育成しているそうだ。さらに、施工が始まってからのプロセスも、毎日、職人と交換日記を交わすことで、顧客に見せている。

「職人が施工の進捗状況を報告するだけでなく、お客様が疑問点などを書き、職人がそれに答えたりもしています。『差し入れをありがとうございました』というようなコミュニケーションも生まれます。

世の中では、どんな職人が施工しているのかをお客様が知らないことがよくありますが、コミュニケーションが生まれ、お客様の喜ぶ姿を実感できると、職人にとっての働きがいにもなります」(大友氏)

職人個人にスポットライトが当たることは、いい仕事をする職人が育つことにもつながる。顧客から職人が学ぶことも多いそうだ。

 

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