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年功序列が崩れても...「50代で店じまい」という常識を変えられない日本社会

2021年11月09日 公開
2023年02月21日 更新

児玉治美(アジア開発銀行駐日代表)

 

スキルを磨くのではなく「マインド」を変えよう

これまで多くのメリットがあったがゆえに、今のような制度になっているのかと思いますが、日本には様々な働きづらさがあるのも事実です。年齢に関係なくのびのびと働き続けることが、システム的に難しい部分もあります。

ではその中で、個人としてできることは何でしょうか。それは、特定のスキルを磨くなどのテクニックではなく、マインドを変えることだと思います。

大所高所から物事を俯瞰し、「日本的」な固定観念にとらわれない発想力を日本にいながら、身につけることが大事です。

本や新聞を読むのがまずは第一歩ですが、日本のメディアは国内の情報に多くを割きすぎていて、世界で起こっていることをつぶさに知るには少々難があります。英字新聞やネットや、海外ニュース番組にも挑戦してみて、国外の情報に多く触れるのがお勧めです。 

視野を広く取ると、今の自分や、取り巻く社会に対する見え方が変わります。50歳を過ぎてもキャリアを発展させる人が世界にはいくらでもいること、年齢を理由に不利を強いられる状況は「エイジズム(年齢差別)」と呼ばれて非難されること、それが世界の「当たり前」。外から日本を眺める目を養えば、日本の「当たり前」がいかに偏っているかが見えてくるでしょう。

「それが見えても、日本にいる以上、何も変えられない」と感じるでしょうか? 決してそんなことはありません。

前述の通り、50代の皆さんは多くがリーダーの立場にあります。会社の中で大きな決定権を持つ方も多いでしょう。ならば自らの手で、会社を変えられるのではないでしょうか。

制度を改善する、チームの多様性を活かす、グローバル人材の育成に尽力する――その働きかけは自分自身にとどまらず、組織、ひいては社会に影響をもたらします。

そう、50代は「まだまだこれから」。広い視野と柔軟な発想を携えた50代は、未来を変えうる力を持っているのです。

 

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